海外進出企業が注意したい2つの国際税務

3.《移転価格税制》取引価格の変更による所得流出を防ぐ

(12/10/01)

●中堅・中小企業への移転価格税制の適用が増加中


 おそらく、移転価格税制という言葉は多くの人にとって耳慣れない言葉でしょう。移転価格税制は、専門家の中でも特殊な分野として、理解することが難しい分野だといわれています。しかし、近年中堅・中小企業も移転価格税制の理解が重要になってきました。

 移転価格税制とは、資本関係等のある関連者間の取引価格を操作することによって、特定の関連者の得るべき所得が、他国の関連者に移転するのを防ぐことを目的とするものです。

 数年前まで日本を代表する大企業が、移転価格税制で課税されるケースが多かったため、移転価格税制を聞いたことはあっても、中堅・中小企業とは無縁の税制であると考えた方が少なくないでしょう。

 しかし、この近年は大企業だけでなく、中堅・中小企業も移転価格税制で課税されるケースが増えてきました。

 毎年、国税庁から移転価格税制の課税実績が発表されており、移転価格税制の更正件数は増加傾向にあります。

 なかでも特に注目される点として、平成21事務年度より、国税局所管の大規模法人だけでなく、税務署所管の中堅・中小企業を含めた課税件数に公表方法が変更されました。これは、中堅・中小企業への課税強化の流れを裏づけるものと考えられます。

 さらに、多くの中堅・中小企業が進出しているアジア各国では、移転価格税制の執行が強化されており、海外での移転価格課税も頻発するようになりました。

 日本においても、移転価格税制導入当初は外資系企業を中心に移転価格課税が行われており、アジア各国にとっての外資系である日本企業の子会社が、まず課税の対象となってくるのは当然の帰結だと考えられます。

移転価格税制適用による更正件数・金額

国際税務.com

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