目次 I-8


8 資本的支出と修繕費の区分はどうする(1)

形式的な区分による判定
 製造業であるK社は、取得価額1,000万円の機械を4台保有しています。しかし、最近、故障が増加してきたこともあり、当期に、4台の機械全部について修理・改良等を行いました。各機械について、修理・改良等のために要した支出は以下のとおりです。
 A機械  15万円
 B機械  50万円
 C機械  90万円
 D機械 120万円
 しかし、資本的支出か修繕費かが明らかでない支出ばかりでしたので、いずれも修繕費として処理しています。

調査官の指摘
 A機械からC機械に対する支出については、修繕費として処理できますが、D機械に対する支出については、資本的支出として処理すべき部分があるかを検討する必要があります。

会社の言い分
 いずれの支出も、明らかに資本的支出とは言えないものばかりでしたので修繕費として処理したものです。



税務判断のポイント

 調査官の指摘どおり、D機械に対する支出については、資本的支出として処理すべき部分があるかどうかを検討する必要があります。

 修理・改良等のために行った支出を、資本的支出とするか、修繕費とするかの区分は、やや複雑ですが、おおむね次のような基準により判定することとされています。

(1)  まず、支出額が20万円未満、又は、おおむね3年以内の周期で発生する支出かどうかを判定します。該当すれば修繕費として処理します。
(2)  次に、明らかに資本的支出となるもの(I−1の【税理士のアドバイス】で具体例として示したようなものほか)、明らかに修繕費になるもの(I−6の【税理士のアドバイス】で具体例として示したようなものほか)を、それぞれ、修繕費、資本的支出として処理します。
(3)  (2)で処理した残額が、次のイとロとのいずれかに該当すればその残額全額を修繕費として処理します。
 イ 60万円未満
 ロ  修理・改良等を行った資産の前期末現在の取得価額(未償却残高ではない)の10%未満

 (1)から(3)の基準に基づき、本事例を検討します。
 A機械については支出額が20万円未満であるので、(1)の基準により修繕費となります。
 B機械についても支出額が60万円未満であるので、(3)のイの基準により修繕費、C機械についても支出額が取得価額の10%(100万円)未満であるので、(3)のロの基準により修繕費となります。
 しかし、D機械については、(3)の基準の60万円未満にも、取得価額の10%未満にも該当しませんので、形式的に修繕費として処理することはできません。したがって、実質的に資本的支出か修繕費かの判断を行う必要があります。

税理士のアドバイス

 資本的支出か修繕費か明らかでない支出については、前述の(1)から(3)までの基準により処理できるものはないかをまず検討する必要があります。 なお、前述の(1)から(3)までの基準でも資本的支出か修繕費かの区分がつかない金額がある場合に、
 (1) その金額の30%相当額か、
 (2) その修理・改良等をした資産の前期末における取得価額の10%相当額のいずれか少ない金額を修繕費とし、残りを資本的支出として法人が継続して経理している場合には、その処理も認められています。
 この方法を採用し、形式的に区分できる部分を多くするのも一つの方法です。

【参考法令】  法基通7−8−5(資本的支出と修繕費の区分の特例)
 法基通7−8−3(少額又は周期の短い費用の損金算入)
 法基通7−8−4(形式基準による修繕費の判定)

 

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