目次 I-6


6 どこまでが修繕費の範囲となるか(2)

耐用年数経過後に行われた資産に対する補修費用
 不動産賃貸業を営むI社の保有する賃貸用アパートは、築後30年と法定耐用年数をすでに経過しており、帳簿価額も取得価額の5%になっていますが、まだまだ使用に耐えられる状態です。
 今回、このアパートの各部屋の壁紙が古くなってきたので従前と同じ材質の壁紙を使用し、張り替え工事を行いました。
 I社は、この工事代金を修繕費として処理しています。

調査官の指摘
 法定耐用年数は、通常の維持補修がなされることを前提として定められたものであり、すでに法定耐用年数が経過した資産について補修に係る支出はもはや修繕費とは認められません。

会社の言い分
 法定耐用年数が経過している資産についても、その内容で判断すべきであり修繕費に該当すると思います。



税務判断のポイント

 調査官の指摘は誤りで、壁紙の張り替えのような支出は、法定耐用年数経過後の建物に対する支出といえども修繕費に該当します。

 本事例のような、壁紙の張り替えの費用ですが、従前と同じ材質の壁紙を使用しているということなので、通常の維持管理のために要した費用であり、修繕費に該当します。
 問題は、法定耐用年数を経過した資産について、修理を行った場合ですが、法定耐用年数は、調査官の指摘どおり、一応、通常の維持補修がなされることを前提として定められたものです。
 しかし、法定耐用年数は、各期の減価償却費の税務上の限度額を定めるために用いられるもので、必ずしも法定耐用年数がその資産の絶対的な使用可能期間を表しているものではありません。
 したがって、すでに法定耐用年数を経過した資産についても、現実にその資産を使用している限りは、通常の資産と同じ基準で、資本的支出か修繕費かの区分を行うべきです。
 調査官の指摘のように、法定耐用年数が経過したからといって、その後に行われた補修等の支出をすべて資本的支出とする必要はありません。

税理士のアドバイス

 耐用年数をすでに経過したような資産についてなされた、補修・改良等の支出でも、通常の資産と同じ基準で資本的支出か修繕費かの区分を行う必要があります。
 なお、本事例の壁紙の張り替えのように、修繕費に該当するものとして、次に掲げるもの等が一定の条件のもとで例示されています。

(1)  建物の移えい又は解体移築をした場合における移えい又は移築に要した費用の額
(2)  機械装置の移設(集中生産のためのものを除きます。)に要した費用の額
(3)  地盤沈下した土地を沈下前の状態に回復するために行う地盛りに要した費用の額
(4)  土地の水はけを良くする等のために行う砂利、採石等の敷設に要した費用の額

【参考法令】  法基通7−8−9(耐用年数を経過した資産についてした修理、改良等)、法基通7−8−2(修繕費に含まれる費用)

 

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