目次 I-7


7 どこまでが修繕費の範囲となるか(3)

機能復旧補償金で資産を取得した場合
 J社は、不動産貸付業を営み、賃貸用アパートを所有しています。
 最近、このアパートの近所に、高層ビルが建てられたため、テレビの写りが悪くなるなどの、電波障害が生じるようになりまりした。
 そこで、J社は、電波障害を解消するため、共同受信アンテナを建てましたが、その費用相当額を高層ビルの施主から、電波障害に係る補償金として受け取っています。
 J社では、アンテナの建設費を修繕費とし、受け取った補償金を雑収入とする処理を行っています。

調査官の指摘
 J社が建てた受信アンテナは簿外資産となっています。
 受け取った補償金を雑収入計上するのは当然ですが、アンテナの取得費用は修繕費ではなく、資産計上すべきものです。

会社の言い分
 本来、高層ビルが建設されなければ必要のなかった支出であり、そのアンテナを建てた結果、高層ビルが建設される前より受信状態が改善されたというわけでもありません。したがって、アンテナの取得費は修繕費に該当します。



税務判断のポイント

 調査官の指摘は誤りで、修繕費に該当します。

 本事例のように、受け取った補償金で資産を購入したような場合、本来ならば、調査官の指摘どおり、補償金は収益計上し、その固定資産の取得や改良に要した費用は、資本的支出として資産に計上しなければなりません。
 しかし、このような処理を行うと、補償金を受け取った法人に課税関係が生じ、被害を被っている法人にとって酷な結果となります。
 そこで、固定資産の通常の維持管理や災害等によりき損した固定資産を現状回復するための費用が修繕費であるという考え方をもとに、本事例のように、
 (1)  法人が有する固定資産について、電波障害、日照妨害、騒音等による機能の低下があり、
 (2)  その原因者からその機能を復旧するための補償金の交付を受け、
 (3)  その補償金でその交付の目的に適合した固定資産の取得又は改良をした場合
は、たとえ外見上は資本的支出に当たるような支出であっても、その支出は、修繕費として処理することが認められています。


税理士のアドバイス

 固定資産の取得又は改良をした場合でも、本事例のように、機能を復旧するための補償金を使って、機能復旧のための支出を行った場合には修繕費となることに留意してください。

【参考法令】  法基通7−8−7(機能復旧補償金による固定資産の取得又は改良)

 

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