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9 資本的支出と修繕費の区分はどうする(2) |
調査官の指摘どおり、残りの600万円部分についても資本的支出か修繕費かの検討を行わなければなりませんが、結果的には、本事例では、L社の処理どおり、残りの600万円は全額修繕費となります。 本事例のように、より良い部分品に取り替えたような場合の資本的支出と修繕費の区分は、I−8でも述べたように、おおむね以下のような手順で行います。 まず、明らかに資本的支出に該当する部分を求めます。(1)の800万円と(2)の600万円との差額200万円が明らかに資本的支出に該当する部分です。 次に、残額の600万円部分についてですが、単純には修繕費とはならず、資本的支出か修繕費かが明らかでない部分として、調査官の指摘どおり、さらに資本的支出か修繕費かの判定を行わなければなりません。 この600万円部分については、(a)60万円未満か、(b)建物の取得価額のおおむね10%以下であれば修繕費処理が認められます。本事例のケースでは、(a)の60万円未満という基準には該当しませんが、(b)の建物の取得価額のおおむね10%以下(本事例の場合には、建物の取得価額7,000万円×10%=700万円)の基準に該当しますので、600万円部分については、全額修繕費処理が認められます。 本事例の場合には、結果的に、残りの部分につき全額修繕費処理が認められましたが、仮に、資本的支出か修繕費かが明らかでない部分が上記(a)、(b)のいずれの基準にも該当しないような場合には、次の(1)又は(2)のいずれかの方法により、資本的支出か修繕費かを区分しなければなりません。
本事例のように、資産の一部を従来より品質の高いものに取り替えたような場合には、従来と同質のものに取り替えた場合の費用と、より良い部品に取り替えた場合の費用との差額のみを資本的支出とするだけではなく、残りの部分についても資本的支出か修繕費かの判定をする必要があることにご注意ください。 なお、本事例の場合、取り除いたスチールサッシの除却損は計上できませんので、その点もご注意ください。
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