目次 IV-4


4.取引相場のない株式の発行会社が株式を相互に持ち合っている場合
(3社持ち合いの場合)

Question
 取引相場のない株式の発行会社(3社)が株式を下図のように相互に持ち合っている場合の評価はどのようになりますか。なお、3社ともに評価対象会社の各株式の評価方法はいずれも純資産価額方式によるものとします。



Answer
 3社が株式を相互に持ち合っているA社、B社及びC社の株式をそれぞれ純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)により評価する場合には、A社の所有するB社株式の価額(上図(1)、算式中の記号:X1)及びC社株式の価額(上図(2)、算式中の記号:Y1)、B社の所有するA社株式の価額(上図(3)、算式中の記号:Z1)及びC社株式の価額(上図(4)、算式中の記号:Y2)、C社の所有するA社株式の価額(上図(5)、算式中の記号Z2)及びB社株式の価額(上図(6)、算式中の記号:X2)を求め、当該価額を基にして計算することになります。

 具体的な評価算式は下記のとおりになります。

  X1=α(b+Y2+Z1) X2= β

α
X1
  X2=β(b+Y2+Z1)
  Y1=γ(c+Z2+X2) Y2= δ

γ
Y1
  Y2=δ(c+Z2+X2)
  Z1=ε(a+X1+Y1) Z2= ζ

ε
Z1
  Z2=ζ(a+X1+Y1)

 上記の算式を更に展開すると下記のとおりとなります。

  
 X1=α(b+ δ

γ
Y1+Z1)
 Y1=γ(c+ ζ

ε
Z1+ β

α
X1)
 Z1=ε(a+X1+Y1)

 以上より、X1からZ2までの各株式の価額は次のとおりに求められます。

  X1= α{(ε+δζ)a+(1−γζ)b+(δ+γε)c}

1− αε−βδ−γζ− αδζ−βγε
  X2= β{(ε+δζ)a+(1−γζ)b+(δ+γε)c}

1−αε−βδ−γζ−αδζ−βγε
  Y1= γ{(ζ+βε)a+ (β+αζ)b+(1−αε)c}

1−αε−βδ−γζ−αδζ−βγε
  Y2= δ{(ζ+βε)a+ (β+αζ)b+(1−αε)c}

1−αε−βδ−γζ−αδζ−βγε
  Z1= ε{(1−βδ)a+ (α+βγ)b+(γ +αδ)c}

1−αε−βδ−γζ−αδζ−βγε
  Z2= ζ{(1−βδ)a+ (α+βγ)b+(γ +αδ)c}

1−αε−βδ−γζ−αδζ−βγε

算式中の記号の示すものは次のとおりです。
X1: A社の所有するB社株式の相続税評価額
X2: C社の所有するB社株式の相続税評価額
Y1: A社の所有するC社株式の相続税評価額
Y2: B社の所有するC社株式の相続税評価額
Z1: B社の所有するA社株式の相続税評価額
Z2: C社の所有するA社株式の相続税評価額
α: B社の発行済株式数のうちA社が所有する株式数の割合
β: B社の発行済株式数のうちC社が所有する株式数の割合
γ: C社の発行済株式数のうちA社が所有する株式数の割合
δ: C社の発行済株式数のうちB社が所有する株式数の割合
ε: A社の発行済株式数のうちB社が所有する株式数の割合
ζ: A社の発行済株式数のうちC社が所有する株式数の割合
a: A社の、B社株式及びC社株式を除く各資産の相続税評価額の合計額から、各負債の金額の合計額を控除した金額(B社株式及びC社株式を除いて計算したA社の評価明細書第5表の「(1)−(3)」の金額)
b: B社の、A社株式及びC社株式を除く各資産の相続税評価額の合計額から、各負債の金額の合計額を控除した金額(A社株式及びC社株式を除いて計算したB社の評価明細書第5表の「(1)−(3)」の金額)
c: C社の、A社株式及びB社株式を除く各資産の相続税評価額の合計額から、各負債の金額の合計額を控除した金額(A社株式及びB社株式を除いて計算したC社の評価明細書第5表の「(1)−(3)」の金額)

 上記の算式により求めた価額を、取引相場のない株式等の評価明細書の第5表の「資産の部」の「相続税評価額」の欄に記入することになりますが、その価額が負数(マイナス)のときは「0」と記入します。

 なお、相互に所有する株式数が少ないような場合等で、課税上の弊害がないと認められるときには、上記算式により計算することに代えて、評価の簡便性の観点から帳簿価額又は額面金額で評価することができるものと考えられます。

 

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