目次 III-9


9.課税時期後に焼失した家屋の評価
(評価対象物は家屋か、それとも火災保険請求権か?)

Question
 父は就寝中に発生した火災により焼死しました。また家屋(父所有)も全焼と判定され、当該家屋に付保されていた火災保険金(掛金負担者:父)2,000万円を相続人が取得しました。
 この場合の父の相続財産については、家屋(焼失)とするのか、それとも火災保険金(請求権)とするのかいずれによりますか。また、相続申告について留意すべき事項があれば併せて説明してください。

 資料  出火日時 …… 平成×年3月5日午前1時20分
 鎮火日時 …… 平成×年3月5日午前2時40分
 父の死亡推定日時 …… 平成×年3月5日午前2時頃
 家屋の固定資産税評価額 …… 800万円


Answer
 相続財産の範囲、その評価額の決定等は、別段に定めるものを除いては、すべて課税時期(相続開始時)の現況により行うものとされており、相続開始時とは被相続人の死亡時をいいます。したがって、被相続人が焼死した後に家屋が完全に焼失したと考えられ、課税時期において家屋はまだ存在していたものとして取り扱うのが理論的です。(ただし、この相続財産となる家屋については、下記(参考資料)の「災害減免法」により評価の対象とされない場合が大部分であると思われます。)

 なお、火災保険金については、当該支給額が火災の鎮火後に引受保険会社の査定等により具体的に定まることから、被相続人が原始的に火災保険金請求権を取得していて、その後、相続開始に伴って相続人が当該請求権を相続により承継したとは事例の場合には考えられませんので、当該火災保険(請求権)を相続財産に含めるのは適切ではありません。

(注) この場合の火災保険金は、相続人の所得(非課税所得〔所法9(1)十六〕)として取り扱うこととなります。

(参考資料)相続財産が災害により滅失した場合の取扱い(災害減免法の適用)
 相続財産について、震災、風水害、落雷、火災その他これに類する災害によって被害を受けたときには、次の(イ)又は(ロ)のいずれかに該当する場合、相続税について災害減免法の規定による減免措置を受けることができます。

 (イ)  相続税の課税価格の計算の基礎となった財産の価額の合計額(債務控除後の価額)のうちに被害を受けた部分の価額の合計額の占める割合が10分の1以上であるとき

 (ロ)  相続税の課税価格の計算の基礎となった動産等(動産((金銭及び有価証券を除きます。))、不動産((土地及び土地の上に存する権利を除きます。))及び立木)の価額の合計額のうちに動産等について被害を受けた部分の価額の占める割合が10分の1以上であるとき

 (イ)又は(ロ)に該当する場合の具体的な減免額及び減免措置の適用を受けるための手続については、相続財産について被害を受けた時期が相続税の申告期限の前か後かにより次のとおりとなります。

被害を受
けた時期
相続税の申告期限前 相続税の申告期限後
相続税額の減免額 (相続税額の軽減規定の適用)
 相続税の課税価格の計算につき、被害を受けた財産の価額を控除したところにより課税価格を計算し、これに基づいて相続税額を計算します。
(相続税額の免除規定の適用)
 災害があった日以後に納付すべき相続税額について、次の計算式により計算した相続税額が免除されます。
災害があった日
以後に納付す
べき相続税額
×


被害を受けた部分の価額

課税価格の計算の基礎と
なった財産の価額


免除される相続税額

(債務控除後の価額)
減免措置を受けるための手続  相続税の期限内申告書に、被害を受けた財産について被害を受けた部分の価額を控除した価額により課税価格及び相続税額を記載するとともに、その財産の被害の状況その他一定の事項を記載した計算明細書を添付して提出します。  下記の事項を記載した「免除承認申請書」を災害の止んだ日から2ヶ月以内に納税地の所轄税務署長に提出する必要があります。
(1) 災害減免法の適用を受ける旨
(2) 被害の状況
(3)  被害を受けた部分の価額その他一定の事項
 (注) この事例の場合には、相続税の申告期限前に被害を受けたものとして、災害減免法の規定を適用することとなります。

 

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