目次 III-8


8.評価対象物の認定
(評価対象物は購入した家屋か、それとも購入資金か?)

Question
 私は、この度、父の資金によりマイホームを購入しようと考えています。購入価額は、3,000万円ですが、家屋の相続税評価額は1,600万円となっています。父はこの家屋の名義を当初より私のものとしたいと考えているようですが、このような場合に父から私が贈与を受けたとされるのは購入した家屋でしょうか、それとも家屋の購入資金でしょうか。
 なお、今回の住宅の購入に関する交渉、契約等の判断及び手続等については、すべて私が自己の意思と責任において取り行っています。

Answer
 贈与の対象物が家屋そのものであるか、それとも家屋の購入資金とされるのかにより受贈者の贈与税の負担に相当の差異が生じてきます。これを判断するためには、次に掲げるような事実認定の基準を通じて総合的に行う必要があります。

(イ)  家屋そのものの贈与と認定される場合
 購入する住宅に関する物件の調査、選定、価額等の交渉、購入に関する契約や手続の履行等の購入に関する各段階で、専らお父様が主導権を発揮して意思決定を行ったものと認められる場合には、いったんお父様が家屋を取得して、その後、あなたに家屋の贈与を行ったと考えるのが相当であると思われます。この場合には、お父様からあなたに対して家屋の贈与があったものとして取り扱われます。

(ロ)  家屋の購入資金の贈与と認定される場合
 (イ)に掲げるような家屋の購入に至る各段階における意思決定をあなたが行ったものと認められる場合には、その家屋の購入主体はあなたであり、お父様は単に購入資金の提供(贈与)を行ったと考えるのが相当であると思われます。この場合には、家屋の購入資金の贈与があったものとして取り扱われます。
 したがって、事例の場合には、あなた(子)が住宅の購入に関する交渉等の主体者(責任者)となっているとのことですから、今回のお父様からの贈与の対象とされるのは、特に反証のない限り、家屋の購入資金であると考えられます。
 なお、ご質問の場合には、次の(A)又は(B)のどちらの登記の手順によったとしても、その判断結果(家屋の購入資金の贈与)に差異は生じないと考えられます。

(A)  当初からあなたの名義で登記をする方法
(B)  当初はお父様の名義で登記し、その後、あなたに所有権移転登記(原因は贈与)をする方法

 

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