目次 II-5


5.賃貸アパート等の全室が課税時期において
『空室』となっている場合の貸家建付地評価の可否

Question
 賃貸アパートの入居者の全員が近隣の1年制の専門学校(4月に入学し翌年の2月初旬に卒業)の生徒であるため、毎年2月の後半及び3月は入居者が存在しない状況(旧年度の在学生は2月中に退去し、新年度の入学生とアパートの賃貸借契約を締結するのは3月下旬となり、実際の学生の入居は4月上旬となります。)が慣例となっています。(下記【図解】を参照)
 このような状況において、3月初旬に課税時期が到来した場合の当該賃貸アパートの敷地に対する貸家建付地評価の可否について説明してください。

【図解】
【図解】


Answer
 ご質問の場合の賃貸アパート等についても、平成11年7月19日付けの財産評価基本通達の改正により設けられた貸家建付地の評価に関する緩和基準である継続的に賃貸されていた各独立部分で、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められるものを『賃貸されている各独立部分』に含むものとするという取扱いの適用があるようにも思われますが、この緩和基準を適用するための大前提として、賃貸アパート等に課税時期現在において1人でも借家人が存在することを基因として、その借家人の有する権利が当該賃貸アパート等の敷地全体に及んでいる状況にあることが必要と考えられます。

 したがって、賃貸アパート等で課税時期前から継続的に貸し付けられていたものであっても、課税時期において、構造上区分された数個の各独立部分からなる部分のすべてが空室となっていた(換言すれば、全く借家人が存在していない)場合には、借家人の有する権利を一切考慮する必要がないこととなりますので、理論的には、課税時期において全室が空室である当該賃貸アパート等の敷地の用に供されている宅地に係る財産評価上の区分は、貸家貸付地とはされず自用地として評価する必要があるものと考えられます。

 

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