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II. 賃貸住宅の評価Q&A


1.継続的に賃貸されていたアパート等で課税時期において一時的に
空室であったと認められる部分に該当するか否かについての判断基準

Question
 財産評価基本通達26(貸家建付地の評価)に定める貸家建付地の評価計算の基礎となる賃貸割合の計算において、『賃貸されている各独立部分』には、継続的に賃貸されていた各独立部分(アパート等)で、課税時期において、一時的に賃貸されていなかった(空室であった)と認められる部分を含むものとされていますが、この   部分に該当するか否かはどのような基準により判断することになりますか。

Answer
 従来の実務においては、旧来より継続的に賃貸されていた家屋(貸家)について、入居者の入れ替わり等でたまたま、課税時期の前後において、一時的に賃貸されていなかった事例に対して、貸家建付地評価を適用することについて、次のとおり見解が分かれることもあったようです。

 (1)  貸家建付地とは貸家の敷地の用に供されている宅地であり、貸家とは、借家権の目的となっている家屋、すなわち、現実に借家人の存する家屋をいうものであるから、この考え方(原則的取扱い)を厳格に適用した場合には、そのような事例の土地を貸家建付地として評価することは認められない(自用地として評価する)という見解

 (2)  事例の特殊性((イ)旧来から継続的に賃貸されてきたものであること、(ロ)1人でも借家人が存在すれば、その敷地に対する権利は実質上は敷地全体に及ぶと考えられること等)から考慮して、課税時期に、たまたま一時的に空室であったことのみに着目して評価(空室部分に対応する敷地について、自用地評価)するのではなく、全体の事実関係に着目して総合的に判断されるべきであるとする見解

 そこで、財産評価基本通達の改正(平成11年7月19日付、課評2−12他)を機会に、貸家建付地の評価について、新たに『賃貸割合』という概念を採用し、アパート等で課税時期において空室(借家人が不存在)である部分については、上記(1)に掲げる原則的な取扱いを適用することとし、また、その一方で、継続的に賃貸されていたアパート等に課税時期において一時的に空室であったと認められる部分がある場合には、その部分を含めて全体を課税時期において賃貸されていたものとして、貸家建付地として評価して差し支えないものとする緩和措置が通達に明示されることになりました。

 また、この財産評価基本通達において示されている『継続的に賃貸されていたアパート等で課税時期において一時的に空室であったと認められる部分』に該当するか否かについては、この通達改正後に国税庁から情報(資産評価企画官情報第2号 平成11年7月29日)が公開されており、当該情報によれば、次に掲げるような事実関係から総合的に判断するものとされています。

 (イ)  各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものかどうか。
 (ロ)  賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われたかどうか。
 (ハ)  空室の期間、他の用途に供されていないかどうか。
 (ニ)  空室の期間が、課税時期の前後の例えば1か月程度であるなど一時的な期間であるかどうか。
 (ホ)  課税時期後の賃貸が一時的なものではないかどうか。

<賃貸割合>
 『賃貸割合』は、その貸家に係る各独立部分(構造上区分された数個の部分の各部分をいう。以下同じ。)がある場合に、その各独立部分の賃貸の状況に基づいて、次の算式により計算した割合によります。
 (算式) Aのうち課税時期において賃貸されている各独立部分の床面積の合計

当該家屋の各独立部分の床面積の合計(A)
注1 上記算式の『各独立部分』とは、建物の構成部分である隔壁、扉、階層(天井及び床)等によって他の部分と完全に遮断されている部分で独立した出入口を有するなど独立して賃貸その他の用に供することができるものをいいます。したがって、例えば、ふすま、障子又はベニヤ板等の堅固でないものによって仕切られている部分及び階層で区分されていても、独立した出入口を有しない部分は『各独立部分』には該当しないものとされます。
 なお、外部に接する出入口を有しない部分であっても、共同で使用すべき廊下、階段、エレベーター等の共用部分のみを通って外部と出入することができる構造となっているものは、上記の『独立した出入口を有するもの』に該当するものとされています。
注2 上記算式の『賃貸されている各独立部分』には、継続的に賃貸されていた各独立部分で、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められるものを含むこととして差し支えないものとされています。

 

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