目次 II-12


12.建物賃貸借予約契約の締結段階における貸家建付地評価の可否

Question
 父は、所有地上に新たに貸ビルを建築中でしたが亡くなってしまいました。生前に当該貸ビルの入居予定者との間で「建物賃貸借予約契約」を締結し、予約金も受領していました。父の死亡後は、相続人である私が貸ビルを完成させ、正式に「建物賃貸借契約」(予約契約の内容とほぼ同じで、父の受領した予約金は敷金の一部に充当されます。)を入居者との間で締結しました。
 このような場合、課税時期における父所有地の評価は、既に本契約とほぼ同一の内容を有する予約契約も締結されていることも考慮して貸家建付地として評価することができますか。



Answer
 財産評価通達に定める貸家建付地とは、現に貸家(借地借家法の規定により家屋の賃借人が有する借家権の目的となっている家屋をいいます。)の目的の用に供されている宅地をいうものとされていますが、評価対象地を貸家建付地として評価するためには、原則として、当該評価対象地が次のすべての要件を充足することが必要です。

(イ)  建物が完成していること(使用収益の開始が可能な状態にあること)
(ロ)  賃借人が建物の引渡しを受けて現実に入居していること又は契約上の賃貸借の開始の期日が既に到来していること
(ハ)  建物の賃貸に係る通常の賃料に相当する金銭の授受があること又は当該権利義務が発 生していること

 事例の場合、課税時期(相続開始日)現在において、賃貸予定の建物は未完成であり(当然に賃借人が建物の引渡しを受けて現実に入居することは不可能)、また、建物の賃貸に係る通常の賃料(家賃)の支払(権利義務の確定も含みます。)もないので、当該建物は、上記(イ)から(ハ)までの要件を充足しないこととなります。また、当該建築中の建物については、賃貸借予約契約が締結されているとのことですが、賃貸借予約契約は将来の賃貸借契約を締結させる義務を確認するものであり、これをもって事実上の賃貸借契約を締結したものとして課税時期において契約上の賃貸借の開始の期日が既に到来していると解釈することは困難であると思われます。

 したがって、事例のような新規に建築中である貸家の用に供する予定の建物は、課税時期現在においては貸家とは認められず、その結果、その敷地の用に供されている宅地は貸家建付地として評価するのではなく、自用地として評価することになります。

 

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