目次 II-4-Q


4 チェックリストで確認:有価証券(株式)の相続申告における留意事項一覧

◆ 本項目のポイント ◆
有価証券(特に株式の存在及び数量把握を中心として)の相続財産申告に際して、実務上誤りやすい事項を中心に、チェックリスト形式でその留意点をまとめてみましたので、最終段階での確認時に活用してください。



Q 有価証券(特に株式)の存在及び数量把握に関する確認方法

Question
被相続人所有の有価証券(株式)の状況については、相続人等から一通り聴取をしていますが、これ以外にどのような点に着目して、相続財産である有価証券(株式)の存在及び数量把握に努めればよいのか、その確認方法について説明してください。



Answer

 被相続人の家族で収入がないにもかかわらず、当該家族名義の株式等がある場合には、その実質の所有者は誰であるのか(被相続人に帰属する名義借用株式ではないのか)等の確認が必要となりますが、詳細については【解 説】のチェックリストを参照してください。

【解 説】

有価証券(株式)の存在及び数量把握に関する確認事項一覧表 確認
被相続人の家族で収入がないにもかかわらず、当該家族名義の株式等がある場合には、その実質の所有者は誰であるのか。(被相続人に帰属する名義借用株式ではないのか。)  
株式の申告数量と当該株式の残高証明書(株式の名義書替代行機関等で発行)の記載数量とは一致しているか。(不一致である場合には、その理由に合理性((例)売却済の株式で買主において名義書替えが未了)が確認できること及び不一致分に係る代替資産への反映が適正に確認できることが必要となる。)  
株式の申告数量と当該株式に係る配当等の支払調書、及び所得税の確定申告で配当所得として申告されている株式数量とは一致しているか。(不一致である場合には、上記2のかっこ書きの確認が必要となる。)  
被相続人の銀行預金口座に配当金の振込みがあるにもかかわらず、これに対応する株式等の申告がなされていない銘柄は存在しないか。(当該銘柄が存在する場合には、上記2のかっこ書きの確認が必要となる。)  
入金された配当金額から逆算した想定所有株数と申告株数とが不一致であるものはないか。(上場株式等については、『会社四季報』等により配当金額の確認が容易)

なお、不一致の銘柄が存在する場合には、上記2のかっこ書きの確認が必要となる。
 
預貯金の口座の異動状況等から、証券会社との取引が認められる場合に、当該取引は今回の相続申告に適正に反映されているか。  
農協、生協、信用金庫等に預金がある場合、当該農協等に対する出資金の申告がなされているか。(農協等においては組合員(出資の引受けが原則として必要)でなければ、取引口座の開設ができないものとされている。)  
証券会社との取引高と生前の所得状況、先代からの相続財産の承継状況等との関係において、他人名義借用株式又は株式購入資金の貸借関係が想定されないか。  
相続開始前に増資(有償交付・無償交付)がなされた銘柄について、増資分に係る株式の数量もれはないか。  
10 被相続人の生前の資料(株式売買報告書、所得税の確定申告に係る配当所得欄及び財産債務の明細書等)から判断して、被相続人と証券会社との取引が多数ある場合には、それに見合う株式の数量の申告がなされているか。  
11 被相続人の主宰する同族法人が証券会社と取引を行っている場合に、当該証券会社に被相続人名義の取引口座が開設されていないか。  
12 被相続人の相続人等(親族)が証券会社に勤務している場合、当該証券会社に被相続人名義の取引口座が開設されていないか。  
13 銀行借入金等の担保として、銀行等に差し入れた有価証券(担保差入れ有価証券)の存在をもらしていないか。  
14 証券会社との間で株式の信用取引の委託保証金として差し入れられた代用証券の存在をもらしていないか。(また、信用取引(信用売取引・信用買取引)の課税時期における処理の確認も必要となる。)  
15 被相続人の主宰する同族法人の取引先である上場会社の株式を被相続人名義で所有していることが想定されないか。(特に、当該主宰同族法人が当該上場会社と専属取引関係((例)専属下請工場)にある場合には注意を要する。)  
16 被相続人が高額所得者であった場合、過去に住民税のみの是正申告(処理)がなされていないか確認したか。(この場合、所得税において配当等につき源泉分離課税(税率35%)を選択した株式等の存在が想定される可能性があることに注意を要する。)  
17 取引相場のない株式に係る申告数量は適正であるのか。(特に、当該株式が被相続人の主宰同族法人の株式の場合には、『名義借用株式』の存在が想定されるが、これについてその有無を次に掲げるような書類を基礎として確認したか。)
 (1)  法人税申告書別表2
 (2)  会社設立時の書類(発起人会議事録、定款等)
 (3)  株主の異動に係る承認書類(株式の譲渡制限規定が設けられている場合には取締役会議事録)
 (4)  株券の裏書きの状況等
 (5)  配当金の支払及び当該配当金の使用収益、所得税申告の状況等
 

 

目次 次ページ