目次 II-2-Q1


2 チェックリストで確認:不動産(宅地)の相続申告における留意事項一覧

 
◆ 本項目のポイント ◆
不動産(特に宅地を中心として)の相続財産評価に際して、実務上誤りやすい事項を中心に、チェックリスト形式でその留意点をまとめてみましたので、最終段階での確認時に活用してください。



Q1 不動産(宅地)の申告もれ防止に関する確認方法

Question
被相続人所有の不動産(宅地)の所在については、相続人等から一通り聴取をしていますが、これ以外にどのような点に着目して、相続財産である土地(宅地)の申告もれの防止に努めればよいのか、その確認方法について説明してください。



Answer

 既に相続の開始があった先代(例えば、今回の被相続人の父母)名義の不動産(宅地)で、相続登記が未了のままになっているものが申告もれになっていないか等の確認が必要となりますが、詳細については【解 説】のチェックリストを参照してください。

【解 説】

不動産(宅地)の申告もれ防止に関する確認事項一覧表 確認
既に相続の開始があった先代(例えば、今回の被相続人の父母)名義の不動産(宅地)で、相続登記が未了のままになっているものが申告もれになっていないか。  
被相続人に係る相続開始時の住所(住民票の除票で確認)における不動産(宅地)の申告はあるか。もし、その申告がない場合には、その理由は明確(例えば、被相続人の配偶者名義で、生前に贈与税の配偶者控除の特例を適用して贈与済みである等)に説明できるものとなっているか。  
相続人等が被相続人と同居せず、他の市区町村に居住している場合、当該市区町村に被相続人名義の不動産(宅地)の申告もれはないか。(この場合、当該相続人等の居住用財産の名義及びその取得の経緯の妥当性を確認する必要があります。)  
被相続人の本籍地と相続開始時の住所が異なる場合、本籍地に被相続人所有の不動産(宅地)の存在が想定されないか。  
被相続人が自営業者(個人)で、事業所等が自宅所在地以外の他市区町村にある場合、当該事業所等に係る不動産(宅地)が被相続人の所有であると想定されないか。(この場合、事業所等が繁華な地域に存するときには、所有権ではなく、借地権又は借家権としての認識が必要な場合もありますので留意が必要です。)  
被相続人が同族法人を主宰している場合、当該同族法人の本店、支店又は事業所等の所在地に、被相続人所有の不動産(宅地)の存在が想定されないか。(この場合、主宰法人の法人税申告書に添付されている『地代家賃の支払明細書』と突合させることにより確認することができます。(貸地・貸家契約が有償契約である場合))  
被相続人と他の者とで共有になっている不動産(宅地)の申告もれはないか。(特に、被相続人の共有持分の割合が低い場合には、固定資産税の評価証明書には、『○○○○他何名』と筆頭所有者のみの名義が記載され、持分割合の低い者の名義記載は省略される場合が多いので留意が必要です。)  
所得税の確定申告において、不動産所得の申告対象となっている貸付資産(貸家・貸地)については、すべて申告もれなく計上されているか。  
被相続人が生前の譲渡所得申告において、課税特例(買換え特例、代替資産の取得特例)の適用を受けていた場合には、当該買換資産又は代替資産である不動産(宅地)は、今回の申告に適正に反映されているのか。  
10 被相続人に係る相続税申告において、債務控除として固定資産税や未払金(不動産(宅地)に係る購入資金、修繕費及び管理費)が計上されている場合には、当該計上対象とされた不動産(宅地)の申告はなされているのか。  
11 被相続人の住所地から相当な遠隔地のゴルフ会員権の保有が認められる場合、別荘等の不動産やリゾートホテルの優先利用権等の存在は想定されないか。  
12 被相続人の生前の海外渡航先が特定地に偏っている場合、当該渡航先に海外不動産(コンドミニアム等)の所有が想定されないか。  
13 今回の相続が相次相続に該当する場合、第一次相続により取得した不動産(宅地)については、今回の相続(第二次相続)において申告もれとなっていないか。(当該不動産が今回の相続申告に反映されていない場合には、その理由(贈与、売却済等)は適正か、また、当該税務処理(贈与税申告、譲渡所得税申告)は適正か、更に、譲渡の場合には代替資産(化体資産)の今回の相続申告への反映を確認できたのか。)  
14 被相続人の債務控除において借入金がある場合、不動産(宅地)取得(又は取得手付)のための借入金ではないのか。(特に、不動産登記簿謄本の『乙区』に抵当権(根抵当権)の設定登記がなされている場合には、当該借入金による資金使途は明確になっているのか。)  
15 被相続人所有の建物等がある場合、当該建物等の敷地の所有者について確認をしているのか。(宅地について被相続人の名義となっているものはないのか、また、借地権として申告を必要とするものはないのかについて確認が必要です。)  
16 被相続人に係る相続人や孫等が不動産を所有している場合には、その実質(真実)の所有者は誰なのかを検討したか。(特に、相続人等の購入時の年齢が若かったり、無収入者等であったりした場合には、より慎重な判断が求められることになる。)
(注) 場合によっては、購入資金等の贈与又は被相続人の名義借用財産として相続財産に反映させる必要があることにも留意しなければならない。
 

 

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