目次 II-1-Q4


Q4 貸家建付地評価が可能であるか否かの判定例

 
Question
次の(1)から(3)に掲げる状況にある貸家家屋の敷地の用に供されている宅地の評価について、これを貸家建付地に該当するものとして取り扱うことが可能でしょうか。
(1) 賃貸家屋(1棟の独立家屋である戸建住宅)が課税時期において空室となっている場合
(2) 新築した賃貸用アパート等の一部が課税時期において空室となっている場合
(3) 賃貸アパート等(従来より継続して貸付け)の全室が課税時期において空室となっている場合



Answer

 上記(1)から(3)に掲げる宅地については、いずれも、借家権の目的とされている家屋(貸家)の敷地の用に供されているものとは認められず、また、Q3に掲げる貸家建付地評価に関する緩和基準の適用対象にも該当しないため、貸家建付地として評価することは認められず、自用地として評価することになります。

【解 説】

(1) 賃貸家屋(1棟の独立家屋である戸建住宅)が課税時期において空家となっている場合

 貸家建付地とは、貸家の目的に供される宅地をいい、この場合の『貸家の目的に供されている』とは、課税時期において、借家権の目的とされる家屋として現実に貸し付けられていることを意味するものと解されています。したがって、家屋について、たとえ、次に掲げるような要件や事実が認められたとしても、課税時期において現実に貸し付けられていないものの敷地については、これを貸家建付地として評価することは認められず、自用地として評価することになります。

 (a)当該家屋が貸付用の家屋として建築されたことが明確であること。
 (b)旧来において実際に入居者が存していたこと。
 (c)課税時期において入居者を広告募集中であったこと。

 なお、Q3に掲げる貸家建付地に対する評価緩和基準は、その貸家に係る『各独立部分(構造上区分された数個の部分の各部分をいいます。)』がある場合を前提として設けられた規定であり、(1)の事例のように、貸家に係る各独立部分を有しない1棟の独立家屋である戸建住宅の敷地についてまで適用されるものではないことに留意する必要があります。


(2) 新築した賃貸用アパート等の一部が課税時期において空室となっている場合

 Q3に掲げる貸家建付地評価に関する緩和基準によれば、課税時期現在において現実に貸し付けられていない場合であっても、継続的に賃貸されていたアパート等で課税時期において一時的に空室であったと認められる部分について貸家建付地評価が可能であるとされており、この部分に該当するか否かの具体的な判定基準として公開されている情報(資産評価企画官情報第2号 平成11年7月29日)において、その判定要素の1つとして、『各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものかどうか。』という項目が挙げられています。
 上記の  部分の取扱いから、この緩和基準の適用対象とされるのは、課税時期前から継続的に賃貸されてきた各独立部分からなる家屋であり、(2)の事例のように、新規に貸付けを開始した新築の賃貸アパート等の空室部分に対応する敷地についてまで適用されるものではないことに留意する必要があります。
 したがって、(2)の事例の新築の賃貸アパート等の空室部分に対応する敷地部分については、貸家建付地として評価するのではなく、自用地として評価することになります。


(3) 賃貸アパート等(従来より継続して貸付け)の全室が課税時期において空室となっている場合

 Q3に掲げる貸家建付地評価に関する緩和基準の適用前提として、課税時期現在において賃貸アパート等に1人でも借家人が存在することが必要であると考えられ、これにより、その借家人の有する権利が当該賃貸アパート等の敷地全体に及んでいることが当該緩和基準の適用趣旨になっているものと思われます。
 したがって、賃貸アパート等で課税時期前から継続的に貸し付けられていたものであっても、課税時期において、構造上区分された数個の各独立部分からなる部分のすべてが空室となっており、まったく借家人が存在していない(3)の事例については、当該賃貸アパート等の敷地の用に供されている宅地は、貸家建付地として評価するのではなく、自用地として評価することになります。

 

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