目次 II-1-Q1


II.相続税申告の勘どころ


1 貸家建付地の評価方法とその留意点

◆ 本項目のポイント ◆
(1) いわゆる相続税対策として、未利用地に賃貸住宅を建築する事例を数多く見受けますが、このような賃貸住宅の敷地の用に供されている宅地(貸家建付地)の評価方法について確認してください。
(2) 現行の貸家建付地の評価実務では、『賃貸割合』の概念、とりわけ、継続的に賃貸されていたアパート等の各独立部分で、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められるものの取扱い(Q2及びQ3を参照)がポイントとなりますので確認してください。



Q1 貸家建付地の評価方法

 
Question
貸家建付地の意義及びその評価方法について説明してください。



Answer

 『貸家建付地』とは、貸家の敷地の用に供されている宅地をいいます。この貸家建付地については、借家人の存在により宅地所有者の自由な使用収益に制限が加えられることに配慮して、自用地としての価額から借家人の有する権利の価額を控除した価額によって評価します。

【解 説】

(1) 貸家建付地の意義

 『貸家建付地』とは、貸家(注)の敷地の用に供されている宅地をいいます。

 (注)  『貸家』とは、借家権(借地借家法に係る借家に対する保護規定の適用対象となる家屋の賃借人が有する賃借権)の目的とされる家屋をいいます。したがって、家屋の貸借契約が賃貸借契約ではなく使用貸借契約の場合には、原則として、貸家建付地として評価することにならず、自用地として評価することになります。

 このような貸家建付地については、経済的事質上において借家人は借家建物の賃借権に基づく利用の範囲内である程度の土地の使用収益権(借家人の有する権利)を有しているものと認められることから、その一方の宅地所有者については、その所有する宅地について上記の借家人の有する権利の範囲内においてその自由な使用収益権が制限されることになります。
 この点に着目して、相続税等の財産評価基本通達では、貸家建付地の評価方法を定め(自用地としての評価額よりも低く評価:(2)を参照)、自用地の評価額との均衡を保持しています。


(2) 貸家建付地の評価方法

 貸家建付地の価額は、その宅地の自用地としての価額から、その自用地としての価額にその宅地に係る借地権割合とその貸家に係る借家権割合との相乗積に賃貸割合を乗じて計算した価額(借家人の有する権利の価額)を控除した価額をもって評価します。この取扱いを算式で示すと次のとおりです。

 (算式)
 

 (注1)  『借地権割合』は、財産評価基本通達27(借地権の評価)の定めによるその宅地に係る借地権割合によります。なお、借地権の取引慣行がない地域に存する貸家建付地については、その借地権割合を20%として計算します。
 (注2)  『借家権割合』は、国税局長の定める割合によりますが、具体的には、財産評価基準書に明示されており、現行では次表のとおりとなっています。
家屋所在地の国税局 家屋の所在地の状況 借家権割合
大阪国税局管内の地域 (1)路線価が設定されている地域 40%
(2)市制が施行されている地域 40%
(3)上記(1)(2)以外の地域 30%
その他の地域 30%
 (注3)  『賃貸割合』については、Q2を参照

 

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