目次 II-1-Q2


Q2 賃貸割合の意義

Question
Q1(2)に掲げる貸家建付地の評価方法を定めた算式において、使用されている賃貸割合の意義及びその適用上の留意点について説明してください。



Answer

 賃貸割合は、評価対象地上に存する貸家に係る各独立部分がある場合((例)当該貸家がアパート等である場合)に使用する概念で、その適用上の留意点として、賃貸されている各独立部分の解釈のなかに、継続的に賃貸されていた各独立部分で、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められるものを含むものとされている点が挙げられます。

【解 説】

(1) 賃貸割合の意義

 『賃貸割合』とは、その貸家に係る各独立部分(構造上区分された数個の部分の各部分をいいます。以下同じ。)がある場合に、その各独立部分の賃貸の状況に基づいて、次の算式により計算した割合をいいます。

(算式)
  Aのうち課税時期において賃貸されている各独立部分の床面積の合計

 当該家屋の各独立部分の床面積の合計(A)

 (注1)  上記算式の『各独立部分』とは、建物の構成部分である隔壁、扉、階層(天井及び床)等によって他の部分と完全に遮断されている部分で独立した出入口を有するなど独立して賃貸その他の用に供することができるものをいいます。したがって、例えば、ふすま、障子又はベニヤ板等の堅固でないものによって仕切られている部分及び階層で区分されていても、独立した出入口を有しない部分は『各独立部分』には該当しないものとされます。
 なお、外部に接する出入口を有しない部分であっても、共同で使用すべき廊下、階段、エレベーター等の共用部分のみを通って外部と出入りすることができる構造となっているものは、上記の『独立した出入口を有するもの』に該当するものとされています。
 (注2)  上記算式の『賃貸されている各独立部分』には、継続的に賃貸されていた各独立部分で、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められるものを含むこととして差し支えないものとされています。


(2) 賃貸割合の適用上の留意点

 上記(1)に掲げる賃貸割合を貸家建付地の評価に適用する場合において、当該貸家がアパート等各独立部分を有する家屋であるときには、貸家建付地の理論的な評価趣旨に合致した原則的な取扱いと実務上の要請に基づく一定要件の充足を条件とした緩和措置ともいうべき特例的な取扱いがあることに留意する必要があります。

  (a) 〔原則的な取扱い〕  アパート等各独立部分を有する家屋に対する賃貸割合の適用
 
Q1より、貸家建付地とは、貸家(借家権の目的となっている家屋)の敷地の用に供されている宅地をいいますが、この『借家権の目的となっている家屋』とは、現実に借家人の存在する貸し付けられている家屋を指すものと理解することが相当であると考えられます。それゆえに、たとえ、その家屋がもっぱら賃貸用として建築されたものであっても、課税時期において現実に貸し付けられていない家屋(借家人の存在しない家屋)の敷地については、貸家建付地としての減価を行う必要はないことになります。
 そこで、当該貸家がアパート等の各独立部分を有するものであって、その一部について、課税時期において現実に貸し付けられていない部分がある場合には、その部分に対応する敷地については貸家建付地としての評価は行わないことになり、この賃貸割合の概念を適用することにより、その調整を図ることが可能となります。

  (b) 〔特例的な取扱い〕  継続的に賃貸されていたアパート等に課税時期において一時的に空室であったと認められる部分がある場合の緩和措置
 
 評価対象地を貸家建付地として取り扱うためには、原則として、評価対象地上の家屋について、(イ)課税時期において(判定時点)、(ロ)現実に借家権の目的として貸し付けられている(判定要件)ことが必要であるとされています。
 しかしながら、アパート等各独立部分を有する家屋においては、課税時期にたまたま一時的に空室が生じていることも考えられますが、アパート等に、たとえ、1人でも現に借家人が存在している場合には、その借家人の有する権利は当該アパート等の敷地全体に及ぶものと解釈するのが相当であると考えられます。
 そこで、現行の財産評価基本通達における取扱いでは、上記(a)の原則的な取扱いに対する緩和措置として、継続的に賃貸されていたアパート等に課税時期において一時的に空室であったと認められる部分がある場合には、その部分を含めて全体を課税時期において賃貸されていたものとして差し支えないものとする旨が示されています。(この取扱いに関する具体的な判断基準については、Q3を参照)

 

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