目次 II-5(6)


(6) 定期贈与による贈与の工夫

 例えば、1,000万円を贈与する旨の契約書を作り、100万円を10年間で贈与を行った場合は、当初の年に贈与があったものとして課税されます。その場合、分割贈与であることから相続税法第24条の有期定期金に準じて贈与金の評価を行うこととなります。

 1,000万円×60/100=600万円

<有期定期金の評価>
 有期定期金の評価は、その残存期間に応じ、その残存期間に受けるべき給付金額の総額に、下表に掲げる割合を乗じて計算した金額とされています。ただし、その価額が1年間に受けるべき金額の15倍を超える場合には、1年間に受けるべき金額の15倍に相当する金額により評価します。

算式
 (1) 残存期間に受けるべき給付金額の総額×評価割合 いずれか
低い方の価額
 (2) 1年間に受けるべき金額×15

残存期間 割 合   残存期間 割 合
 5年以下 70%   15年超 25年以下 40%
 5年超 10年以下 60%   25年超 35年以下 30%
10年超 15年以下 50%   35年超 20%

 そこで、毎年300万円を6年間に分割贈与する契約をし、5年間続けて合計9,000万円を贈与します。


<定期贈与一覧表>
(単位:万円)
  支  払  年
平成
13年
平成
14年
平成
15年
平成
16年
平成
17年
平成
18年
平成
19年
平成
20年
平成
21年
平成
22年

 

 
平成
13年
300 300 300 300 300 300 1,800
平成
14年
300 300 300 300 300 300 1,800
平成
15年
300 300 300 300 300 300 1,800
平成
16年
300 300 300 300 300 300 1,800
平成
17年
300 300 300 300 300 300 1,800
300 600 900 1,200 1,500 1,500 1,200 900 600 300 9,000

(1) 有期定期金による贈与
 贈与税の課税価格 1,800万円×60/100=1,080万円
 贈与税額 (1,080万円−110万円)×45%−140万円=296.5万円
        296.5万円×5回=1,482.5万円

(2) 毎年900万円を10年間単年贈与し合計9,000万円を贈与した場合
 贈与税額 (900万円−110万円)×40%−100万円=216万円
        216万円×10回=2,160万円

 以上のことから一定額以上の贈与を行う場合には、「単年贈与」よりも「定期贈与」が有利であることがわかります。
 そこで、定期贈与による相続対策を設例で解説します。

 設 例
 1 被相続人  父(平成18年1月3日死亡)
 2 相続人  長男・長女
 3 相続財産  (平成13年1月1日現在)
 不動産 3億円(平成18年まで価格の変動がないものと仮定)
 現金   2億円
 4 贈与方法
(1) 定期贈与
 父が1,800万円の掛金を提供し毎年300万円を6年間にわたり年金の支給を受けるものの受給権を長男・長女にそれぞれ平成13年から平成17年まで毎年贈与する(利子率の運用益については考慮しないこととする。)。
(2) 単年贈与
 父が毎年900万円を長男・長女にそれぞれ平成13年から平成17年まで毎年贈与する。

   贈与別相続税一覧表 (単位:万円)
  定期贈与 単年贈与
不動産 30,000 30,000
現金(注1) 2,000 11,000
生前贈与加算(注2) 6,480 5,400
課税価格 38,480 46,400
相続税の総額 9,552 12,720
贈与税額控除(注3) △11,779 △1,296
納付すべき相続税 7,773 11,424
 (注1)  定期贈与:20,000万円−(1,800万円×5年×2人)=2,000万円
 単年贈与:20,000万円−(900万円×5年×2人)=11,000万円
 (注2)  生前贈与加算の金額
  定期贈与 1,080万円×3年(H15〜17年)×2人=6,480万円
  単年贈与 900万円×3年(H15〜17年)×2人=5,400万円
 (注3)  贈与税額控除
  定期贈与 296.5万円×3年×2人=1,779万円
  単年贈与 216万円×3年×2人=1,296万円

  有利不利の判定 (単位:万円)
  定期贈与 単年贈与 差引計
相続税額 7,773 11,424 △3,651
贈与税額 296.5×2回(H13年及び14年)×2人=1,186 216×2回(H13年及び14年)×2人=864 322
合 計 8,959 12,288 △3,329

 

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