目次 II-5(5)


(5) 生前贈与加算の対象者以外の者への贈与

 相続開始前3年以内の贈与財産の相続財産への加算制度は、相続又は遺贈によって財産を取得した者が、被相続人から相続開始前3年以内に贈与によって財産を取得しているときは、その贈与のあった時の贈与財産の価格を相続税の課税価格に加算し、その加算後の金額を相続税の課税価格とみなして相続税を計算するというものです。

 しかし、被相続人から相続開始前3年以内に贈与を受けた者であっても、その者が相続又は遺贈により財産を取得しなければ、その贈与財産が相続税の課税価格に加算されることはありません。

 設 例
  遺産の総額   10億円

  家族構成 父・長男・長男の妻・孫A・孫B・長女・長女の夫・孫C・孫D。なお、母は既に死亡している。

  贈与の実行 父から長男の妻、孫A、孫B、長女の夫、孫C及び孫Dの計6名に、1人当たり500万円の贈与を平成13年1月に、平成13年3月にもう一度各人に500万円の贈与をした後に、父が平成13年4月に死亡した。
 その結果、遺産は10億円−(500万円×6人×2回)=9.4億円に減少している。なお、法定相続人以外の者は遺贈により遺産を取得していない。

  贈与の効果
贈与前 相続税  40,760万円
贈与後 相続税  37,160万円
贈与税 834万円 (6人分・2回分の合計)
 贈与後の合計  37,994万円
節税効果 2,766万円

  対策の解説 相続又は遺贈により財産を取得しない人、すなわち法定相続人(設例では長男及び長女)でない人で、遺言書などにより遺産を取得していない長男及び長女の配偶者並びに孫などへの贈与は、相続開始前3年以内の贈与であっても相続税の課税価格に加算されません。

 なお、贈与はお互いの意思確認で成立する行為ですから、その意思確認後、契約書などの書面を作成し、贈与の事実を客観的に証明できるように配慮しておくことが大切です。現金の贈与の場合には、直接手渡しで現金を贈与するのではなく、金融機関の通帳等を通す形で行えば現金贈与の証拠が残り万全といえます。また、一暦年の受贈額が110万円を超える場合には贈与税の申告と納税を忘れないように行わなければなりません。

 

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