目次 II-4


4 贈与を活用した相続対策

(1) 受贈者課税を活かす

 贈与税は累進税率でしかも受贈者課税ですから同じ贈与額でも、多くの受贈者に分散して贈与した方が贈与税の税率を低く抑えることができます。

 設 例
   ケースA  受贈者 1人
 贈与額 1,000万円
   ケースB  受贈者 5人
 贈与額  200万円/1人
   ケースA
     (1,000万円−110万円)×45%−140万円=260.5万円
   ケースB
     (200万円−110万円)×10%×5人=45万円


(2) 税率の低いところで連年贈与

 贈与税は暦年課税で、しかも贈与する時期を選べます。そこで、一度に多額の贈与をすると課税価格に対する適用税率が高くなるので何年にも分けて贈与し、課税価格に対する適用税率を低くして贈与します。

 しかし、この場合は、「毎年500万円ずつ2年間贈与する」というように、定期の給付を目的とする「定期贈与」と判定されないよう注意が必要です。

 そのため、毎年の贈与にあたり贈与契約書を作成することはもちろんのこと、毎年贈与する金額を変動させるとか、贈与する財産の種類を変えるなどの工夫もその一つです。また、土地を持分で少しずつ贈与する場合には、その贈与の都度所有権の移転登記を行うようにします。

 設 例
 贈与額  1,000万円
 贈与年  平成13年に贈与…ケースA
 平成13年と14年に2分割して贈与…ケースB
 贈与税  ケースA
    (1,000万円−110万円)×45%−140万円=260.5万円
 ケースB
    {(500万円−110万円)×30%−47.5万円}×2年=139万円


(3) 形態の異なる「贈与」を組み合わせる

 (1)の複数の受贈者への贈与と(2)の年を分けて行う贈与を組み合わせるとより大きな効果があります。つまり、多くの受贈者に「将来値上がりしそうな財産」「相続税評価額と時価との開差の大きな財産」などを、適用税率の低い所で毎年贈与を繰り返すというようなことです。

 設 例
(1)  推定相続人  子供2人
(2)  将来値上がりしそうなA土地
   平成13年   相続税評価額   2,000万円
   平成16年予想 相続税評価額   4,000万円
(3)  その他の財産(将来とも変動しないものと仮定)
                   9億6,000万円
(4)  平成16年予想相続税評価額    10億円
(5)  A土地を平成13年に子供や孫など4人へ500万円ずつ、持分で贈与を実行
(6)  効果
   対策前平成16年の予想相結税  4億  760万円
   対策後平成16年の予想相続税  3億8,360万円
      平成13年の贈与税        278万円
      対策後の合計       3億8,638万円

 贈与による対策を実行することにより2,122万円税負担が軽減されます。


(4) 高収益物件を贈与する

 贈与があった場合、贈与した資産の相続税評価額により贈与税が課されることとなりますが、現行の財産評価基本通達においては、その資産の収益性はほとんど加味して評価されていません。そのため、その資産の収益性が大きく異なっていても、相続税評価額は同額のものもあります。そこで、高収益を生む資産を贈与することにより、贈与後はその果実は受贈者に帰属することとなり、相続対策上効果的な贈与となります。

 

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