目次 I-1


I. 贈与とは

 贈与とは当事者の一方(贈与者)が自己の財産を無償で相手方(受贈者)に与える意思表示をし、相手方が受諾することによって成立する契約です。本来贈与は、恩恵・好意・謝意等の原因を動機としてなされるものですから法規範の対象外と考えられるのですが、近代民法は贈与を契約としてとらえて法的な拘束力を与えています。


1 贈与契約の方法

 外国では、贈与の約束に公証人の作成した贈与証書や裁判所の証書作成等を要求していますが、日本の民法では贈与を「不要式の諾成契約」としています。つまり、贈与者が「あげましょう」という意思表示を行い、受贈者が「受け取ります」という意思表示をすれば、贈与契約は成立します。

 また、贈与契約は書面による必要はありませんが、書面によらなかったときは、給付を履行する前であれば、いつでも取消しができます。

 このように「書面によらない贈与はいつでも取消しができる」としたことにより、書面による贈与のみに法的な拘束力が与えられました。これは、贈与者の軽率な行為を戒め、贈与者の意思を明確にすることによって後日の紛争を避けるためです。

 

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