目次 ケース8


 第3章 相続開始後すぐに行う手続き

ケース8  相続税申告に必要な資料の収集

Question

 相続税申告業務を受注し、これから資料の収集を行う段階です。相続財産の評価にあたって、どのような資料を収集すればよいでしょうか。


Answer

 一般的な相続税申告において、被相続人の課税相続財産は、大きく分類すると、

 1) 土地
 2) 建物
 3) 金融資産
 4) 生命保険
 5) その他の資産
 6) 債務
 7) 葬儀費用

などから構成されていると考えられます。そのため、相続開始時における各種財産および債務の評価額を証明できる資料が必要となります。

 また、名義財産や生前贈与が存在する可能性もありますので、相続人にヒアリングした上で、必要となる資料を決定しましょう。


[解 説]

1 資料の収集は相続人と税理士事務所、どちらで行うか

 必要資料には、葬儀費用の領収書や貸家の賃貸借契約書など、税理士が収集すると手間がかかってしまうものや、収集そのものが困難なものが多くあります。そのため、必要資料一覧を作成し、相続人に資料を収集していただくのが望ましいでしょう。

 ただし、不動産の登記簿や公図の写しなど、煩雑な手続きを要せずに税理士が収集可能な資料もありますので、相続人に費用や手数料を示し、打合せのうえ、資料収集の分担を決定するとよいでしょう。


2 各種財産および債務の資料収集の注意点

(1) 土地・建物関係
  ・ 固定資産課税台帳を取得する場合、共有している不動産については別の台帳となるため注意が必要。
貸家がある場合は、賃貸借契約書を準備してもらう。土地、建物の評価に用いるのみだけでなく、敷金を債務計上するための資料にもなる。

(2) 金融資産関係
  ・ 預金残高証明書は、かならず「被相続人の死亡日現在の解約価額」(経過利息込)の証明書を請求することに注意する
預金通帳については、生前贈与の有無の確認の観点からも、過去5年分は入手する。また、名義預金の確認のためにも、配偶者名義の通帳についても極力入手する
投資信託、社債等の金融商品の残高証明書を取得する際は、かならず「被相続人の死亡日現在の解約価額」の証明書を依頼する

(3) 生命保険関係
  ・ 生命保険は、被保険者、保険金負担者、受取人が明示されている資料を入手する
保険金の支払いがなかった保険金については、解約返戻金の額がわかる資料を入手する

(4) 債務・葬儀費用関係
  ・ 葬儀費用関係の資料は、お布施など、領収書がないものであっても実際に支払ったものがあれば、メモ書き等で入手して控除の可否を検討する

(5) その他の資料
  ・ 名義財産、負債が存在する場合には、当該資産の種類に応じて相続財産と同様の資料を入手する


Check!
相続税の申告期限に間に合うようにするためには、遅くとも、申告期限の3か月前には資料をそろえること。
大半のケースでは不足資料が出てくるため、資料の網羅性をまず確認すること。

 

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