目次 ケース5


 第2章 法定相続人を確定させる

ケース5  法定相続人を確定させる方法

Question

 被相続人は過去に離婚歴があり、前妻との間に子どもがいるかどうか不明な状態です。相続税の計算をする上で法定相続人の数が重要な要素になると思うのですが、法定相続人を確定させる方法を教えてください。

 また、申告に必要な戸籍等の収集は、相続人が行うのか、税理士が行うのか、どちらがよいでしょうか。


Answer

 法定相続人を確定させるためには、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を取得する必要があります。相続人自身が被相続人の戸籍を収集することは可能ですが、被相続人が本籍地を何度も移転しているケースや、離婚をしているケースでは、複数の市区町村役場から戸籍を収集する必要があるため、手間がかかります。

 税理士や司法書士等の専門家は、職権で戸籍を収集することができますので、相談者が戸籍の収集に対して消極的な場合は、費用や手数料を示した上で、税理士による代行取得が可能な旨を説明するとよいでしょう。


[解 説]

1 戸籍の取得代行

 税理士資格を有する者であれば、税理士業務において必要な戸籍、除籍の謄本、住民票の写し等を、日本税理士連合会が定めた「戸籍謄本等及び住民基本台帳の閲覧等の請求に関する要項」に基づき、統一様式を利用して相談者に代わって請求することができます。

 この様式は、一般的に「職務上請求書」と呼ばれていますが、各地域の税理士会や支部にて交付を受けることが可能です。相談者より戸籍収集の依頼を受けた際には、この職務上請求書に基づき、税理士が戸籍や住民票の取得を代行することができます。

 請求に際しては、税理士証票のコピーと定額小為替を同封すれば、比較的容易に郵送請求が可能です。


2 相続税申告の大前提

 相続税申告の大前提として、法定相続人の確定はまず行わなければいけない事項です。相続税を計算する上で法定相続人の数は税額に大きな影響を与えます。特に、被相続人が離婚している場合や、養子縁組を行っている場合は注意が必要です。

 法定相続人の確定誤りは、相続税の計算に大きな影響を及ぼしますので、かならず最初に戸籍の連続性確認を行いましょう。


Check!
法定相続人の確定は、相続開始後にまず行う重要な手続き。相続人が知らない前妻の子や養子等の存在が、戸籍を取得することで判明することもある。
被相続人の本籍地がわからない場合は、被相続人の最後の住所地を管轄する市区町村役場で「本籍」「続柄」の記載がある住民票を取得することで、本籍地を確認することができる。
戸籍法によれば、戸籍に記載されている者であれば戸籍謄本の交付を請求することができる。また、必要と認められた利害関係人や正当な理由を明らかにした場合も請求することができる。
弁護士、司法書士、税理士、行政書士等の資格を保有している者は、受任している業務を遂行するために必要がある場合には、職権によって戸籍謄本の交付の請求をすることができる。

 

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