目次 II-7


II−7 認定NPO法人の要件

Question
認定NPO法人となるために必要な要件には、どのようなものがあるのでしょうか。


Answer

 認定NPO法人となるためには次の1から9までの9つの要件を満たしていることが必要です。

 なお、直前2事業年度において満たす必要がある要件としてはからの要件です。


1 総収入の3分の1以上が寄付金であること

 受入寄付金総額等 ÷ 総収入金額等 ≧ 1/3

 アメリカのパブリックサポートテストの日本版といえるもので、直前2事業年度における総収入金額等に占める受入寄付金総額等の割合が3分の1以上であることが要件になります。

 そのNPO法人が多くの人から寄付をもらって運営されているということは、多くの人から支持を受けている公益性が高いNPO法人であるといえることから1つの要件となっています。

 「総収入金額等」は、総収入金額から次に掲げる金額を控除した金額をいいます。

(1)  国又は地方公共団体の補助金その他国又は地方公共団体が反対給付を受けないで交付するもの
(2)  法律又は政令の規定に基づき行われる事業でその対価の全部又は一部につき、その対価を支払うべき者に代わり国又は地方公共団体が負担することとされている場合のその負担部分
(3)  資産の売却による収入で臨時的なもの
(4)  遺贈(贈与者の死亡により効力を生ずる贈与を含む)により受け入れた寄付金、租税特別措置法70条に規定する認定NPO法人に対する相続財産の寄付のうち、一者当たり基準限度超過額(同一の者からの寄付金の額の合計額のうち受入寄付金総額の2%を超える部分の金額)に相当する部分
(5)  同一の者から受け入れた寄付金で事業年度中(事業年度の定めがない場合には、年間)の合計額が3,000円に満たないもの
(6)  寄付者の氏名又は名称が明らかでない寄付金

 「受入寄付金総額等」は、受け入れた寄付金の総額から次に掲げる金額を控除した金額をいいます。

(1)  受入寄付金総額のうち一者当たり基準限度超過額(同一の者からの寄付金の額の合計額のうち受入寄付金総額の2%を超える部分の金額)に相当する部分
(2)  同一の者から受け入れた寄付金で事業年度中の合計額が3,000円に満たないもの
(3)  寄付金の氏又は名称が明らかでない寄付金
  (注) 上記判定において同一の者から受け入れた寄付金の額の判定に当たり次の者は、同一の者とみなされます。
婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
特定の者並びにその特定の者の使用人及び使用人以外の者でその特定の者から受ける金銭その他の財産によって生計を維持しているもの
イ又はロに掲げる者の親族でこれらの者と生計を一にしているもの


2 直前2事業年度等における次の算式により求めた割合のいずれかが80%以下であること

(1)
同一の市町村内の個人又は法人からの寄付金の合計額(最も多くの寄付金を受けた市町村に係るもの)
÷ 受入寄付金総額
(2)
同一の市町村内で行った特定非営利活動(最も特定非営利活動が多い市区町村に係るもの)
÷ すべての特定非営利活動
(3)
特定非営利活動により資産の譲渡等を直接受けた者のうち同一の市町村内の者(最も譲渡等を受けた者の多い市区町村に係るもの)
÷
特定非営利活動により資産の譲渡等を直接受けた者の総数

 (1)は、そのNPO法人の活動が特定の地域の人や法人からの寄付ではなく、複数の地域の人や法人からの寄付を受けていることは、広域性が高いといえることから考えられた判定です。

 (2)は、そのNPO法人の活動が特定の地域における活動ではなく、複数の地域にわたっての活動である場合には、広域性が高いといえることから考えられた判定です。

 この割合は、そのNPO法人の行った特定非営利活動に係る収入金額、支出金額、従事者の作業時間数その他の合理的な指標により算定します。

 (3)は、そのNPO法人の活動により直接財や役務の提供を受ける人が特定の地域の人に限定されず、複数の地域の人にわたっている場合には広域性が高いといえることから考えられた判定です。

 上記(1)(2)(3)の市町村は、東京都の特別区に存する区域及び地方自治法252条の19第1項に規定する指定都市にあっては、区をいいます。

 またNPO法人の主たる事務所の所在地が離島の地域である場合(その離島の地域に2以上の市町村が存する場合を除きます)において、そのNPO法人が主たる事務所の所在地の属する市町村以外の市町村(その主たる事務所の所在地の属する市町村が離島の地域以外の区域を有する場合にあっては、その区域を含みます)に事務所を有しないときは、認定を受けるための要件から除かれます。

   *NPO法人の事務所

 認定要件となります

 認定要件となります

 認定要件から除かれます

 認定要件となります

 認定要件から除かれます


3 直前2事業年度における事業活動の50%以上が次に掲げる活動に該当しないこと

(1)  会員又はこれに類する者(会員等)に対する資産の譲渡等(対価を得ないで行われるものその他一定のものを除く)及び会員等相互の交流、連絡又は意見交換等その対象が会員等である活動
(2)  会員等、特定の団体の構成員、特定の職場に属する者、特定の地域に居住し、又は事務所等を有する者などその便益の及び者が特定の範囲の者である活動
(3)  特定の著作物又は特定の者に関する普及啓発、広告宣伝、調査研究、情報提供等の活動
(4)  特定の者に対し、その意に反した作為又は不作為を求める活動

 これらは、対象が会員である活動や便益の及ぶ範囲が特定しているようなサークルなどの共益団体ではなく、広く開かれた活動が全体の事業活動のなかで50%以上必要であることを要求している要件です。

 この割合は、そのNPO法人の行った事業活動に係る事業費の額、従事者の作業時間数その他の合理的な指標により算定します。

 次の4、5、6の3つの要件は、直前2事業年度においてだけでなく、その後も常に満たす必要のある要件です。


4 運営組織及び経理について、次のいずれをも満たしていること

(1)  運営組織が次のいずれにも該当すること
役員又は社員のうち親族等で構成する最も大きなグループの人数 ÷ 役員又は社員の総数≦1/3
役員又は社員のうち特定の法人等の役員若しくは使用人で構成する最も大きなグループの人数 ÷ 役員又は社員の総数≦1/3
(2)  会計について公認会計士等の監査を受けているか、青色申告法人と同等程度の帳簿書類に取引を記録し、それらの帳簿を保存していること
(3)  支出した金銭でその費途が明らかでないものがあるもの、帳簿に虚偽の記載があるものその他の不適正な経理が行われていないこと

 これらの要件は、NPO法人の運営組織と経理の適正さをみるものです。(1)の要件は、NPO法人の運営がある特定の役員や社員の一族、あるいは特定の会社の役員や社員によって自由にすることができるような構成になっていないかをチェックするものです。(2)は会計の専門家である公認会計士の監査を受けるか、青色申告の要件となる複式簿記による会計処理を行い、一定の帳簿を備え付けたうえその帳簿書類の保存を行っているかのいずれかを行っている場合には、適正な会計処理が行われていることが担保できると判断できるため、このような要件となっています。

 (3)は、文字どおり虚偽記載などの不適正な経理を行っていないという適正経理を要件としているものです。


5 事業活動が次のいずれをも満たしていること

(1)  特定非営利活動促進法2条2項2号に規定する次の活動を行っていないこと
 宗教の教義を広め、儀式行事を行い、及び信者を教化育成すること
 政治上の主義を推進し、若しくは支持し、又はこれに反対すること
 特定の公職の候補者(候補者になろうとする者を含みます)若しくは公職にある者又は政党を推薦し、若しくは支持し、又はこれらに反対すること
(2)  役員、社員、従業員若しくは寄付者も若しくはこれらの者と親族関係を有する者又はこれらの者と特殊の関係がある者に対し特別の利益を与えないなど特定の者と特別の関係がないこと
(3)  総事業費のうちに特定非営利活動に係る事業費の占める割合が80%以上であること
(4)  受入寄付金の総額の70%以上を特定非営利活動に係る事業費に充てていること
(5)  助成金の支給を行う場合は、事前に、その助成対象者の募集及び選定の方法並びに助成内容を記載した書類を、事後遅滞なく、その実績を記載した書類をその主たる事務所の所在地又は納税地の所轄税務署長を経由して国税庁長官に提出すること
(6)  海外へ送金又は金銭の持ち出しを行う場合は事前に、その金額及び使途並びにその予定日を記載した書類を国税庁に提出すること(災害に対する援助など緊急を要する場合で事前の届出が困難なときには、事後遅滞無く、金額及び使途並びにその実施日を記載した書類をその主たる事務所の所在地又は納税地の所轄税務署長を経由して国税庁長官に提出すること)

 これらの要件は、NPO法人の行う事業内容が適正なものであるかを判定するものです。

 (1)は、NPO法人においては「主たる目的」としてこれを行うことはできないとされているため、目的でなければ行うことができますが、認定を受けるためにはいっさい宗教活動や政治活動を行ってはいけないことが求められています。

 (2)は、役員などの特別な関係者にだけ給与の支給や事業の運営等に関して特別の利益を与えるようなことをしていないことが求められています。

 (3)は、特定非営利活動を十分行っているかどうかを判断するため、総事業費のうちに占める特定非営利活動に係る事業費の割合が80%以上あることを求めています。ただし事業費を削減するため、すべて無償ボランティアに作業を委ねているようなNPO法人では、事業費の金額だけでは正しい特定非営利活動の事業費の割合を計算することができません。そこでそのようなNPO法人においては、事業費以外の指標によって算定し、申請書を提出した場合であっても、国税庁長官がその事業費以外の指標によって算定した割合が合理的であると認めた場合には、その指標により算定した割合により判定を行うことができます。

 (4)は、NPO法人に対する寄付は、その法人の特定非営利活動の資金に充てるためのものですが、それを職員の給料や法人の維持費にばかりあてることは、正しい事業活動ということができません。そこで寄付総額の70%以上が事業費に充てられていることを求めているものです。

 (5)は、NPO法人が他の団体に助成金をだすような場合には、その選定基準など審査過程を明らかにする透明性が求められています。

 (6)は、海外への送金や金銭の持ち出しを行う場合にはたとえそれが海外における滞在費や交通費に充てるため持参するものであっても、少額であっても事前に金額、使途、送金予定日等を国税長官に届け出なければなりません。


6 次に掲げる書類について閲覧の請求があった場合には、正当な理由がある場合を除き、閲覧させること

(1)  NPO法28条2項に規定する事業報告書等、役員名簿等及び定款等
(2)  役員報酬又は従業員給与の支給に関する規程
(3)  の(5)及び(6)の規定により国税庁長官に提出した書類の写し
(4)  次に掲げる事項を記載した書類
 収入金額の源泉別の明細、借入金の明細その他の資金に関する事項
 資産の譲渡等に係る事業の料金、条件その他その内容に関する事項
 次に掲げる取引に係る取引先、取引金額その他その内容に関する事項
 収入の生ずる取引及び支出の生ずる取引のそれぞれについて、取引金額の最も多いものから順次その順位を付した場合におけるそれぞれ第1順位から第5順位までの取引
 役員、社員、従業員若しくは寄付者若しくはこれらと親族関係を有する者又はこれらの者と特殊の関係がある者との取引
 会員の資格要件、会員の住所又は事務所の所在地の属する市町村の数、会費その他会員制度に関する事項
 寄付金の募集に関する事項及び受け入れた寄付金の使途の実績に関する事項
 寄付者(その寄付金の額の事業年度中(事業年度の定めがない場合には、年間)の合計額が20万円以上である者に限る)の氏名又は名称及びその住所又は事務所の所在地並びにその寄付金の額及び受領年月日
 報酬又は給与を得た役員又は従業員の氏名及びその金額に関する事項
 支出した寄付金の額並びにその相手先及び支出年月日
(5)  寄付金を充当する予定の具体的な事業の内容を記載した書類

 認定NPO法人は、主たる事務所に上記の(1)から(5)の書類を備え置き閲覧できるようにしておく必要があります。


7 法令違反、不正の行為、公益に反する事実等がないこと

 あらゆる法律に違反しておらず、不正がないだけでなく、公益に反する事実もないことが最終的に担保されていなければならないという包括的な規定といえます。


8 設立の日以後1年を超える期間が経過していること

 申請書を提出した日を含む事業年度開始の日(事業年度の定めがない場合には、申請書を提出した日を含む年の1月1日)において、その設立の日以後1年を超える期間が経過していること。

 その申請が認定NPO法人が次回の認定を受けるために行ったものである場合には、直前に受けた認定に係る直前2事業年度等の最後の事業年度の翌事業年度開始の日(事業年度の定めがない場合には1月1日)から2年以上の期間が経過していることが必要です(図参照)。


9 所轄庁から法令等に違反する疑いがない旨の証明書の交付を受けていること

 認定申請に際してそのNPO法人について法令、法令に基づく行政庁の処分又は定款に違反する疑いがあると認められる相当の理由がない旨の証明書の交付を所轄庁から受けていることが要件となっています。

 

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