目次 II-4


4.償還有価証券の調整差損益

 Question2-4

 売買目的外有価証券に分類される償還有価証券に適用される償却原価法について説明してください。


償却期限及び償還金額のある有価証券については、帳簿価額と償還金額との差額は償却原価法で処理します。この償却原価法の適用において、税務上は定額法しか認められていませんが、会計上は、利息法を原則とし簡便的に定額法も認められています。


 Answer

1 税務上の償却原価法(定額法)

 税務上の償却原価法とは、償却期限及び償還金額の定めのある有価証券については、帳簿価額と償還金額との差額のうち当期に配分すべき金額(調整差益又は調整差損)を期末時の調整前帳簿価額に加算又は減算した金額を有価証券の期末評価額とする方法です(法令139の2)。一般的に定額法といわれる方法です。

 償却原価法が適用される有価証券は次のとおりです。

(1)  売買目的外有価証券のうち償還期限及び償還金額の定めのある償還有価証券
(2)  売買目的有価証券のうち、取引所売買有価証券、店頭売買有価証券、その他価格公表有価証券以外の有価証券で、転換社債を除く償還期限及び償還金額の定めのある有価証券(法令119の13)

償却原価法の具体的な算定式(法令119の14)
  ● 償還有価証券の評価額=当期末調整前帳簿価額 +調整差益
−調整差損

償還有価証券の調整差益又は調整差損の計算

(1) 当期末額面合計額が前期末額面合計額を超える場合(法令139の2(2)一)



(2) 当期末額面合計額が前期末額面合計額以下の場合(法令139の2(2)二)


2 会計上の償却原価法

 会計上、取得価額と額面金額との差額のうち、金利調整額と認められる部分については償却原価法により処理しますが、この償却原価法には利息法と定額法があります。利息法が原則的な処理方法ですが、簡便法として定額法も認められています(会計基準第三二2、実務指針70)。

 この利息法とは、債券のクーポン受取総額と金利調整差額の合計額を、毎期の利息計上額が債券の帳簿価額に対して一定率となるように、各期の損益に配分する方法です。そのため、利息法を適用するためには、一定率(実効利子率)を求める必要があります。一方、定額法は、債券の金利調整差額を取得日から償還日までの期間で除して各期の損益に計上する方法です(実務指針70)。

 会計上は、利息(金利調整差額)の合理的な期間配分の点から利息法が原則的処理となっていますが、税法上は、利息法が認められていないことから、会計上も、継続的適用を条件に、簡便法として定額法が認められていると思われます。


3 税務上と会計上の調整

(1)  会計上、償却原価法として原則的方法である利息法を適用した場合、税務上は定額法しか認められていないことから、各期に配分される金利調整差額は異なります。

(2)  税務上の償却原価法である定額法は、期中の増加分(取得分)を期央に取得したものとみなして簡便的な方法が採用されています。しかし、会計上の定額法は、個々の銘柄ごと各取得単位ごとに適用することを考慮しており、追加取得した場合は、同じ定額法を採用しても、各期に配分される金利調整差額は異なることがあります。

(3)  税法上、償却原価法の対象となる取得差額は、取得原価と償還金額との差額であり、その差額の発生要因を問いません。しかし、会計上、その他有価証券に分類された債券の取得差額は、満期保有目的の債券と異なり、発行会社の信用リスクを反映した部分と金利調整部分から構成されることが考えられます。それぞれの金額が算定できる場合は、金利調整差額部分について償却原価法を適用することになります(実務指針274)。算定できない場合は、取得差額が金利調整差額と認められる債券についてのみ償却原価法を適用することになります。

 

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