目次 I-5


5.退職一時金と適格退職年金を区分しない場合

 Question1-5

 前問の場合において、区分計算書を作成しないで申告する場合はどうなりますか。


区分計算書を添付しない場合は、退職給付引当金に係る繰入額及びその取崩し額の全額が、法人税法の退職給与引当金勘定の繰入れまたは取崩しとして扱われます。


 Answer

 この場合の退職給付引当金の推移は次のとおりです。

  期首残高 当期繰入額 当期取崩し額 期末残高
退職給付引当金 200 1,790 290 1,700


1 法人税法上の取扱い

 区分計算書を添付しない場合には、退職一時金に係る部分に限らず、適格退職年金に係る部分を含めた退職給付引当金の繰入額及び取崩額について、法人税法上の退職給与引当金の規定が適用されます。

 法人税法上、退職給与引当金勘定の取崩しは使用人が退職した場合等の所定の事由がある場合のみ認められます(法令107(2))。そこで問題となるのは、会計上において、

   退職給付引当金 / 現預金

と処理される掛金拠出取引です。この掛金拠出取引による取崩し処理は文理解釈上、法人税法施行令第107条第2項6号の目的外取崩しに該当します。

 ただし、退職給与引当金勘定に繰入限度超過額が含まれている場合には(いわゆる有税引当金のことをいいます。)、その繰入限度超過額を限度として取崩額を認容することができます(法基通11−4−16)。この繰入限度超過額を超える取崩しを行い、その取崩しが目的外取崩しと認定された場合には、その時点の退職給付引当金勘定全額を取り崩さなければなりません(法法54(7)、法令107(2)六)。

 本問での退職給付引当金勘定の取崩額290のうち、法人税法上の取崩しが認められる金額は、当期退職者に係る前期末退職給与要支給額38と前期末退職給与引当金繰入限度超過額の繰越額35の合計73です(法令107(2)一、法基通11−4−16)。したがって、それを超える取崩し額は目的外取崩しと解されます。この場合、取り崩したときの法人税法上の繰越退職給与引当金勘定の金額127(=200−35−38)は申告調整で加算することになります。


2 区分計算書を作成する目的

 退職給付引当金のうち、外部拠出型退職年金制度に係る部分を法人税法の退職給与引当金に係る規定の適用外とすることが区分計算書の目的です。これにより会計上、掛金等の支払による退職給付引当金の取崩し処理を、法人税法施行令に定める目的外取崩しに該当させないことができます。

 

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