目次 II-13


 13 固定資産の交換をする場合

 資産を交換した場合には、原則として、取得した資産の価額により譲渡があったものとして所得税が課税されますが、その交換が一定の要件を満たすときには、譲渡がなかったものとして課税を繰り延べる特例が設けられています。

 なお、この特例は、交換により譲渡した資産の取得時期と取得費を、交換によって取得した資産が引き継ぐことになります。


(1)適用要件

 この特例の適用を受けるためには、次の要件のすべてに該当することが必要です。

(1)  交換譲渡資産も交換取得資産も、いずれも次に掲げる固定資産で、かつ、種類を同じくする資産の交換であること。

 (イ)  土地等
 (ロ)  建物(これに附属する設備や構築物を含みます)
 (ハ)  機械及び装置
 (ニ)  船舶
 (ホ)  鉱業権

  ※  同種の資産の交換とは、例えば次のようなものをいいますから、土地と建物というような交換には、この特例の適用は認められません。

  (イ)  土地と土地の交換
  (ロ)  土地と借地権の交換
  (ハ)  農地と耕作権の交換
  (ニ)  地上権である借地権と賃借権である借地権の交換
  (ホ)  建物と建物の交換
  (ヘ)  建物と建物やその附属設備の交換
  (ト)  建物と建物やその附属構築物の交換
  (チ)  機械と機械の交換
  (リ)  装置と装置の交換
  (ヌ)  機械と装置の交換

(2)  交換による譲渡資産も交換による取得資産も、それぞれの所有者が1年以上所有していたものであり、しかも、交換の相手方が持っていた資産は交換の目的で取得したものでないこと。

(3)  交換で取得した資産を、譲渡した資産の譲渡直前の用途に供すること。
 交換取得資産を交換譲渡資産の譲渡直前の用途と同じ用途に供したかどうかは、その資産の種類に応じ、おおむね次に掲げる区分により判定することとされています。
 
 (イ)  土地にあっては、宅地、田畑、鉱泉地、池沼、山林、牧場又は原野、その他の区分
 (ロ)  建物にあっては、居住の用、店舗又は事務所の用、工場の用、倉庫の用、その他の用の区分

(4)  交換譲渡資産の価額と交換取得資産の価額の差額が、そのいずれか多い方の価額の20%以内であること。


(2)借地権等の設定の対価として土地等を取得した場合

 自己の所有する土地に借地権等の設定(その設定による所得が譲渡所得とされる場合に限ります)をし、その設定の対価として相手方から土地等を取得した場合には土地の交換があったものとして、この特例の適用を受けることができます。


(3)二以上の種類の資産を交換した場合

 二以上の種類の固定資産を同時に交換した場合、例えば、土地及び建物と土地及び建物とを交換した場合には、土地は土地、建物は建物とそれぞれ交換したものとされます。

 この場合において、これらの資産は全体としては等価であるが、土地と土地、建物と建物との価額がそれぞれ異なっているときは、それぞれその価額の差額は交換差金等として取り扱われます。


(4)資産の一部分を交換として他の部分を売買とした場合の交換の特例の適用

 一の資産について、その一部分については交換とし、他の部分については売買としているときは、その他の部分を含めて交換があったものとされ、その売買代金は交換差金等として取り扱われます。


(5)取得資産を譲渡資産の譲渡直前の用途と同一の用途に供する時期

 固定資産を交換した場合において、取得資産をその交換の日の属する年分の確定申告書の提出期限までに譲渡資産の譲渡直前の用途と同一の用途に供したときは、この交換の特例の規定の適用があるものとされます。


(6)譲渡所得の計算

 交換の特例を適用した場合における交換差金等を取得した場合についての譲渡所得の金額の計算は、次の算式によります。

 交換差金
 等の金額
交換譲渡資
産の取得費
譲渡経費 × 交換差金等の金額 =譲渡所得金額
交換取得資
産の時価
交換差金
等の金額


(7)交換取得資産の取得費の計算

 交換の特例を適用し、譲渡がなかったものとみなされた部分については、交換譲渡資産の取得費がそのまま交換取得資産に引き継がれることになります。

 この計算は次の算式によって行います(所令168)。

(イ)交換取得資産とともに交換差金等を取得した場合

交換譲渡資
産の取得費
譲渡
経費
× 交換取得資産の時価 交換取得資産の取
得に要した経費
交換取得資
産の取得費
交換取得資
産の時価
交換差金
等の金額

(ロ)交換譲渡資産とともに交換差金等の交付をして交換取得資産を取得した場合

 交換譲渡資
 産の取得費
+譲渡経費+ 交付した交換
差金等の金額
交換取得資産の取
得に要した経費
交換取得資
産の取得費

(ハ)等価交換の場合

 交換譲渡資
 産の取得費
+譲渡経費+ 交換取得資産の取
得に要した経費
交換取得資
産の取得費


(8)申告手続

 この交換の特例の適用を受けるためには、交換のあった年分の確定申告書にこの特例を適用する旨を記載し、次の事項を記載した譲渡所得の内訳書(計算明細書)を添付のうえ、所轄税務署長に提出しなければなりません。

 (イ)  交換譲渡資産と交換取得資産の種類、数量、用途及びその価額
 (ロ)  交換の相手方の氏名又は名称及び住所もしくは居所又は本店もしくは主たる事務所の所在地
 (ハ)  交換の年月日
 (ニ)  交換譲渡資産及び交換取得資産の取得年月日
 (ホ)  その他参考となるべき事項

 

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