目次 Q7


Q7 貸倒処理について税務調査に備えて書類を整備したいが、
 どのような点について注意したらよいでしょうか。

《ANSWER》

 ここでは、貸倒処理を実施した企業に対して税務調査が入ったことを想定して、ケース別に調査官が調べるポイントについて記載していく。

1.回収不能の事実認定についての留意点

 貸倒れについて税務調査を受けたときに最大のポイントとなるのが、回収不能の事実が本当にあるかどうかである。たとえば、債務者が死亡・行方不明になったからといって直ちに貸倒れとなることはなく、相応の回収努力がなければならない。

 税務上は、本人の所在が本当にわからないこと、債務者から回収できる財産がないことの2点を証明できればよい。まず、本人の所在がわからなくなっている点については、本人の住民票を調査し、その住居、近隣の聞込み調査を実施すべきである。そして、その業務記録や郵便局の不在証明などの書類を、本人の行方がわからないことの記録として残す。もう1点の財産がないことについては、裁判所へ出した仮押え申請、債務者の不動産の登記簿謄本などにより主な財産がないことがわかればよい。

2.貸倒処理済債権の回収についての留意点

 貸倒事由が生じて債権を償却してしまったが、その債権の一部の弁済を受けた場合は、償却済債権取立益などの処理を行うことになる。

【会計処理例】
現金預金 XX / 償却済債権取立益 XX

 この処理は正当な処理であるので、税務調査を受けたとしても何ら困ることはない。しかし、このようなケースでは貸倒れの認定が正確に行われたかどうか、償却済債権の回収が簿外処理されずに正確に記帳されているかどうかについてチェックされよう。

 貸倒認定が否認されるケースとしては、事実上の貸倒事由に従って貸倒処理を行ったような場合や、債権の回収金を簿外収入として処理するケースなど。

3.再建計画での一部債権切捨て

 民事再生法が施行されて経営に行き詰った会社についても、なるべくその債務を免除するなどの措置を講じて、再建させようというのが社会的な流れである。これは、マクロ的に見れば活力のある経済社会が実現できるために、喜ばしいことであるが、いざ債権者の立場に立たされれば悲劇というしかない。しかしながら、ここでは再建計画での一部免除などは、今後よく生じることであると割りきって、その税務処理を考えよう。

 債権の一部免除で税務調査のポイントとなるのは、それが本当に債務の減免であり、「債務者への寄附金」ではないということだ。債務免除がどのような基準で行われたのかを文書にして、証拠として残しておくべきである。

4.取引停止後1年以上の取引先に対する債権の貸倒れ

 備忘価格1円を付して、残りの金額を貸倒損失として処理する。

【貸倒債権が100,000円であったときの会計処理】
貸倒損失 99,999 / 売掛金 99,999

 このような形式基準の貸倒処理について調査するポイントとしては、(1)その企業と継続して取引を行っていたが取引を停止して1年以上経っているかどうか、(2)その企業の資産状態が本当に悪いかどうか、(3)売掛金の回収努力を行っていたかどうかの3つがあげられる。よって、(3)においては売掛金台帳のその企業のページにいままでの取引記録を残しておけばよい。また、債権回収業務記録として訪問実績や電話連絡記録などを残せば十分であろう。

 

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