![]() 企業価値とは〜キャッシュフローの現在価値とは
今回は、「キャッシュフローの現在価値」を中心に、事業価値の算出方法についてご説明します。 以前のコラムで、以下のことをご説明しました。
![]() 前回までの説明で、過去の毎年のキャッシュフローは計算出来るようになります。さて、将来のキャッシュフローはどのように算出するのでしょうか?また、将来のキャッシュフローからどのように事業価値を計算するのでしょうか? 事業価値を計算するには、以下のSTEPで計算していきます。
それぞれをこれから説明します。 【STEP1】将来のキャッシュフローを予測する。 将来のキャッシュフローどころか、将来の売上高も予測することはとても困難なことです。マクロ的な経済状況や、個々の会社の様々な事情、会社の経営方針や新商品の開発状況等、あまりにも多くのことを考えなければいけないからです。特に他社の将来であれば、なおさらのことです。 そこで一般的には、客観的な評価という側面を優先して、確定している過去の決算書から将来を予測します。過去の平均を将来に伸ばしていくことが基本となります。具体的には、「売上高」「売上原価」「販売費および一般管理費」「減価償却費」「運転資本増加額」「設備投資」等に関して過去平均の比率等から、各項目を個別に予測した上で、前回のコラムで記載したようにFCFを計算していきます。 夢物語的な素晴らしい売上高や利益を想定して企業価値や事業価値を評価することはありません。もちろん、将来に関して不都合な個別事情が明らかな場合には、将来予測に反映させることはあります。 【STEP2】将来のキャッシュフローを現在価値に割り引く。 企業価値の評価という意味では、このコラムのシリーズの中で最も重要なポイントですが、「将来のお金を現在の価値に割り引く」という計算があります。 例えば、「現在100万円を持っていて、1年後の価値で言えばいくらになるか?」という質問があるとします。仮に確定的な金利が10%であった場合、100万円を1年間預けることにより110万円になります。1年後に110万円が手に入るのが確実な場合には、金利とは逆に割引率10%で100万円の価値となります。 「割引率」とは、時間という概念で現在の価値へ変換するために利用されます。
もし、3年後に200万円手に入り割引率が5%の場合は、毎年割引率で割り引いていくので、計算式は以下のようになります。 200万円×(100%÷105%)×(100%÷105%)×(100%÷105%)=約173万円 このように、将来手に入る予定のキャッシュフローも、割り引くことが出来ます。割り引いた金額を「現在価値」と呼びます。 ※割引率は、企業価値を評価する人が期待するリターンの率を設定することが本来の方法です。しかしながら、実務的な方法としては任意の一定の比率(例えば10%)を設定するか、より客観的にするために株式市場のデータを利用して設定することが行われています。さらに、保守的に評価するため、株式市場では現れないリスクも考慮する場合があります。 【STEP3】将来のキャッシュフローの現在価値を合算して、事業価値とする。 ここまでで、将来のキャッシュフローを現在価値に計算する方法はお分かりなったかと思います。それらを合計すれば事業価値になります。それでは将来のキャッシュフローは、何年分を計算すれば良いのでしょうか? 企業価値評価は何年間という区切りはなく、会社は永遠に続く前提で計算するので、無限の期間で計算します。これは、割引率で計算された各年度の現在価値は、将来に向かって0に近づくため数学的に合計を算出できます。 ※具体的には、5年間、7年間、10年間等の期間を年度別に個別に計算し、それ以降の分をまとめて計算することが多くなっています。 ![]() ここまでで事業価値が算出できます。この後、企業価値および株式価値は以下のように計算します。 【STEP4】企業価値を計算する。 企業全体の価値である「企業価値」は、将来の事業で得られるキャッシュから算出した「事業価値」と、すでに現在あるキャッシュである「金融資産」を合計したものになります。
「金融資産」には、現金・預金等のお金として利用できるものが入ります。 【STEP5】株式価値を計算する。 「株式価値」とは、株主にとっての株式の価値を表します。これは、企業全体の価値から、有利子負債の借り手に債務を返済した場合の残りの金額となります。
「株式価値」は過去の決算書だけで判断した場合の時価総額の理論値となり、株式数で割ると株価の理論値になります。M&Aの局面では特に、株式価値を売却・買収金額を考える際に参考にします。 ※上場企業において、経済環境が安定している状況の中で、企業の業績も安定していて将来に大きな変化がないと予想され、企業およびその業績が一般的に知られている場合には、理論値の時価総額と実際の時価総額は近づくと言われています。 ![]() 以上のように、【STEP1】〜【STEP5】で「事業価値」「企業価値」「株式価値」が算出されます。これらの算出過程での経営状態の評価や、それぞれの価値の金額を、金融機関・事業承継者・経営者・M&A関係者等が、「評価」「経営改善」「金額算定」等、様々な用途に利用します。 もちろん、将来を予測した上での評価になりますので、前提条件となる将来の「売上高伸び率」「売上原価率」「割引率」等の各指標を変化させシミュレーションしながら、良いシナリオから悪いシナリオまでのように幅を持った評価結果の価値で判断していくこともあります。 以上説明したことにより、中小企業の経営者が自社の将来を予測してどのように対応していくかを考えたり、金融機関や他社からの一般的な評価としてどう見られているか把握したり、事業承継の方法の1つとして他社に売却する際の金額を考えたり、といった様々な視点での評価・観点として、企業価値の考え方や評価結果は経営において重要性を増しています。 |
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