レポート 〜成功する会計事務所のセオリー
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安心感を生み出すもの
(14/02/10)

 顧問先が会計事務所に求めるものの一つに、「何かあったときに相談できる」という“安心感”があります。

 この“安心感”は、『自社のことを把握してもらえている』と感じているから生まれるものですが、何かをきっかけに『自分のことを理解していない』『丁寧に扱われていない』『言ったことが伝わっていない』と感じると“不信感”に変わりやすいものです。

 今回は、この“安心感”について考えてみたいと思います。

 先日聞いた、顧問先の担当者を変更した際に、情報の共有を怠った結果、ミスが発生してしまったという事例をご紹介します。

 ある顧問先の担当者を変更して初めての賞与の時期。担当変更する前は、5月中に賞与の試算をして結果を顧問先の社長に報告するルールになっていました。しかし、新しい担当者はそれを知らず、6月の訪問時に報告をするつもりで準備をしていました。そうすると、5月に社長から連絡が入り、「賞与の試算がまだ来ない!」とクレームになったそうです。原因は、以前の担当者からの引き継ぎ不足です。『賞与の試算結果は5月中に報告する』というルールが引き継がれていれば、防げたクレームでした。

 これでは安心感どころか、信頼関係も崩れてしまいかねません。言い換えれば、こういった顧問先ごとの特有の情報を共有しておくことは、安心感を生み出すポイントの一つだと言えます。しかし、全ての顧問先の細かい情報を担当者が100%覚えておくことは難しいでしょう。たとえ、担当者自身把握しているつもりでも、一人で抱え込まず、備忘の意味も込めて記録しておくことが重要です。

 ある事務所では、次のような内容を『お客様カルテ』という形で記録し、職員みんなで共有しています。

・基本情報(住所、消費税課税区分などの届出情報)
・役員情報(社長や奥様、キーマンの情報)
・資産情報(不動産や金融資産の情報)
・対応履歴(面談や相談を受けた内容の記録)

 この事務所では、担当者が「自分の担当は15件あるが、先月のことですら忘れてしまう。もし記録をしていなかったら、どんなミスが起こっているか・・・」と考え、『お客様カルテ』の必要性・重要性を強く感じて業務をしているということです。

 形の分かりづらいサービスを提供している会計事務所にとって、情報は大きな財産になります。一度、事務所内での情報共有について、考えてみても良いのではないでしょうか。