レポート 〜成功する会計事務所のセオリー
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顧問料と業務範囲
(13/04/30)

 税務研究会が発行する「週刊 税務通信」に記載されていた中から、以下の標題が目につきました。

【 東京地裁 消費税に係る税理士損害賠償請求を棄却 】

 内容を簡単にご紹介すると、企業が顧問契約を締結する税理士法人に対し、消費税課税事業者選択届出書の提出に関する指導・提言の義務を怠ったために、期末在庫の棚卸資産に係る仕入税額控除ができなかったとして、指導・助言義務の債務不履行に伴う還付金相当額1,600万円の賠償金支払いを求めた事案。しかし、結果的にこの賠償請求は棄却されました。

 判決の理由として、企業側が在庫状況の資料等を税理士法人へ提出していなかったこともありますが、他の理由として特に気になったことがあります。

 それは、顧問契約の中に“税務に関するコンサルティング業務”は定められておらず、また月額報酬が2万円と安価であり、「この顧問料で コンサルティング業務までを含むとは考えにくい」と裁判所が判断した、という点です。

 今回のこの事案は、顧問先企業にとってみれば「(顧問税理士に)してもらえるはずだと思っていたことをしてもらえなかった」ということになります。このようなケースは何時でも起こりうる事であり、『現在の顧問料の中でどこまでの範囲の業務を行うのか』を顧問先と会計事務所で相互に確認・理解する必要性を改めて感じました。

 また、最近では“顧問料の低価格化”が進み、ホームページ上で低料金をPRする会計事務所も増えてきました。ある会計事務所では、顧問先企業から「なぜ(他の会計事務所は安いのに)うちの顧問料はこんなに高いの?」と聞かれたそうです。そして、これがそのまま“顧問料の値下げ要求”に発展したケースもあると聞いています。安い顧問料には理由があり、当然ながら、高い顧問料にも理由があります。

 上述の通り、改めて、現在の顧問料とその業務範囲について相互に確認・理解をし、価値を感じていただくことが値下げ要求への対策になると言えます。今一度、先生の事務所が提供するサービス内容とそれぞれの料金を、顧問先と会計事務所、そして職員全員が理解できているかどうか、確認してみてください。