レポート 〜成功する会計事務所のセオリー
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日本一を育てる期待のかけ方<2>
(12/04/23)

 前回の「日本一を育てる期待のかけ方<1>」で「期待のかけ方には正しいかけ方がある」ということと「期待が叶わない大きな原因になる3つのポイント」と、その1つ目の【あいまいな期待】について、解説させていただきました。

 今回は、その続きの【期間が不明確】ということについて、「事務所を任せられるリーダーとして成長してほしい」という職員に対する所長先生からの期待、を例に解説したいと思います。

 【期間が不明確】というのは“いつこの目標を達成するか”ということです。今回取り上げた事例で言うと「その職員が“リーダーとして成長する”のは、今年一年で達成してほしいテーマか? それとも、所長先生が引退するタイミングまで、といった長いスパンの話なのか?」が明確でない、ということです。

 往々にして所長先生は、他の事務所に勤務していた時代から“優秀な会計担当者”であった場合が多いです。そのため、時間が経てば経つ程、所長先生と会計担当者の考える“成長速度”に関する考えに開きが生まれ、所長先生は徐々に苛立ち、場合によっては「(リーダーとして成長させることを)諦めてしまう」ということが起こります。これが2つ目の【期間が不明確】な場合です。

 そして、最後3つ目の理由【プロセスが共有できていないこと】については、今まで見てきた2つの理由を見ても分かる通り、所長先生と会計担当者は互いに自分のイメージを達成するために、邁進しています。所長先生は「事務所を任せられるリーダーとして成長してほしい」という期待をし、職員さんは「事務所を任せられるリーダーに成長したい。」と努力をしています。

 しかし、残念なことに一方通行になっているため、それぞれが別の方向に進んでしまい、元々は所長先生から職員さんへの愛情であったにも関わらず、最終的には対立してしまう、という当初の期待とは全く逆の結果を生んでしまっています。ですから、【期待の正しいかけ方】の最後のポイントとしては、所長先生の期待に対して、職員さんがどのように受け止め、どんな成長をしようと考えているのか? そのプロセスを共有することが重要だ、と考えています。

 また、その中で職員さんが自信を持てないことや、不安に思っていることも聞き出し、一緒に解決してあげることも、目標達成には重要になってきます。

 これで3つすべての【期待の正しいかけ方】のポイントを解説しましたが、もう一つ重要なことがあります。それは、一方的に押し付けず、【その人らしさを引き出すこと】です。

 誰しも、目標などの言葉から連想する“自分のイメージ”を相手に押し付けてしまいがちですし、期待される本人も「○○しなければならない」に囚われてしまい、良いところを引き出す以前に、悪いところの修正にばかり目がいってしまいがちです。しかし、自分のイメージや修正点ばかりを気にしていると、せっかく個性として素晴らしいものを持っていたとしても“普通の人”になってしまいます。そういった意味でも、3つのポイントプラス1つ。“その人らしさ”を加味した期待をかけることをお奨めします。

 最後に、今回なぜこの話をご紹介したいと思ったか、というと、大手会計事務所に成長するカギが【期待のかけ方】にあるのではないか、と感じたからです。私の知っている大手会計事務所の方の中にも、型にはまらない強烈な個性を持っている方もたくさんいらっしゃいます。

 そして、第一線で活躍されています。私が知っている範囲は限られていますので、たまたまかもしれませんが、そういった姿を見る度に、個性を活かして活躍する人も、個性を活かせる環境のある事務所も素晴らしいと感心しています。

 人材育成に“正解”を見つけるのは難しいことですが、今回の話に共感できると思っていただけた方は、是非“3つプラス1つのポイント”を日々の指導の中に取り入れてみてください。