レポート 〜成功する会計事務所のセオリー
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会計事務所の成功とは何か?
(12/01/26)

 「成功する会計事務所のセオリー」をスタートすることとなりました。意外に知ることのない他事務所での取り組みや成功事例、事務所経営に関して私が感じたこと、感銘を受けたことを中心に書きたいと考えています。そして、このレポートを書くにあたり、改めて“会計事務所の成功とは何か”を考えてみました。

 色々なすばらしい先生方の顔が頭に浮かび、その先生方の事務所はどこも成功している、ということに気づきました。そして、会計事務所が成功するためには『職人』か『経営者』の立場を選ぶ必要がある、と感じました。

 今回は、この『職人』と『経営者』の立場を説明するのにピッタリの話がありますのでご紹介しようと思います。この話は、私が“椅子職人の話”と呼んでいるもので「小さな手作り椅子工房が規模の拡大を目指す」という内容です。

椅子職人の話

 ある椅子職人が、工房の規模の拡大を志しました。当時は従業員3人、月間の椅子の生産数が10脚程の小さな工房で、お客様一人一人のオーダーに応え、非常にやりがいも感じて仕事をしていました。しかし、他の椅子工房を見ると、月間100脚を生産し、職人も自分の工房の10倍の30人が働いているところもあります。

 しかし、自分の工房をこの方法で拡大させるには、2つの問題がありました。1つは「職人を一人前に育てるのに時間がかかる」ということ2つ目は「雇った職人の分だけしか生産量が増えない」ということです。

 そこで、別の方法を探そうと思って他の業界を見てみました。すると、自動車のフォードが“特に熟練工を必要とすることなく大量の車を生産している”ということが分かったので「この方法を椅子に応用出来ないか?」と試行錯誤を始めました。こうして、この職人は『経営者』になることを決意します。

 規模拡大の試行錯誤の中で気づいたのは、一人の職人が一つの椅子を仕上げるのではなく、ある職人は椅子の脚だけを作り、ある職人は椅子の背もたれ、そしてある職人は肘掛けを作る、といったように【分業】をすれば効率が上がるのではないか、ということです。

 早速、試しに一つ椅子を作ってみると問題が起こりました。今までのように全工程を一人で行わなくなったため、規格が合わなかったのです。

 そこで、各職人に指示を出し、長さ・形・材料の色などあらゆる部分を統一して改めて作り直しました。工夫を重ねた結果、仕事は単調になったものの、今まで月10脚しか椅子を生産出来なかったのが、従業員15人で月1000脚を生産できるようになりました。

 この方法で上手くいったので「更に多くの椅子を生産しよう」と従業員を一気に100人に増やし、作業のマニュアル化を進めたり、支店を作ったりして規模の拡大を推し進めました。途中、従業員の退職等の問題が発生したものの、最終的には従業員500人、月5万脚の椅子を生産出来るまでの企業になり、売上・規模ともに大きく成長しました。
 

 少し長くなってしまいましたが、この話で皆さんにお伝えしたかったことは【会計業界でも今まさに同様のことが起きている】ということです。最近“低価格”を前面に打ち出し、大量の新規顧客を獲得する会計事務所が急激に増えています。

 この流れの中で“安くてそこそこ”のサービスに流れていくお客様もいるでしょう。しかし、こだわりを持って会計事務所が提供するサービスに価値を感じているお客様は、上の椅子職人の話と同じように“オーダーメイドできめ細かな部分”に心配りの行き届いたサービスを望むでしょう。

 また、会計事務所で働く職員のことを考えてみても、お客様にオーダーメイドのサービスを提供出来る方が“生きがい”を感じて働ける“望ましい姿”なのかも知れません。

 更に、最近ではインターネットの普及が進んで“『職人』『経営者』のどちらの立場を選ぶか?”も予想以上に早く決断しなければならない時期にさしかかっているのではないか、と思っています。

 『職人』『経営者』どちらでの経営を目指すか? そして、先生にとって“成功”とは何か? 一度、是非考えてみてください。