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 労務管理解説
 第2回「年俸制の落とし穴〜年俸制でも残業代の支払は必要?〜」
 −次の日−
上場社長 「みやじぃさん! 年俸制の給与をもらっている人にも残業代を払うべきって本当ですか。昨日、突然、ドットちゃんが社長室に怒鳴り込んできてね。驚いちゃったよ。何かの間違いだよね。」
みやじぃ 「いいえ、間違いではありません、社長。年俸制といえども、残業代はきちんと支払わなければなりませんよ。」
上場社長 「えぇっ! それはどういうこと? 確かに、月給制の場合は、残業すると残業代が必要というのはわかるよ。でも、年俸制というのはスポーツ選手と同じで、1年間いくらって決まっているわけでしょ。」
みやじぃ 「勘違いされている人がたくさんいらっしゃるのは事実ですが・・・。労働基準法第37条では、原則1日8時間、週40時間以上の労働に対しては、25%の割増賃金の支払を義務付けています。これは、年俸制であろうが、月給制であろうがすべての労働者に対して原則適用されることになっています。」
上場社長 「年俸制でも? 仕事のプロなら労働時間より結果で評価すべきではないの?」
みやじぃ 「もちろん。おっしゃるとおり、仕事は結果で評価するものであるという考え方は当然と思います。しかし、上場をするにあたっては、適法の状態であることが最低限の条件です。引受審査や上場審査では、そのあたり厳しくチェックされますよ。」
上場社長 「入社のときに、年俸には残業部分が含んであると説明しているんだけどそれでもだめですか?」
みやじぃ 「確かに雇用契約そのものは口頭でも成立します。ただし、労働基準法では、労働条件について、書面にて通知することを義務としております。その年俸額に残業代が含まれているということであれば、具体的に予定されている残業時間数とその時間の残業代に相当する金額の明示する必要があります。たとえば年間360時間の残業時間が予定されていて、その残業時間に対する割増手当は100万円ですという形で明示しなければなりません。」
上場社長 「なるほど...。」
みやじぃ 「これが明示されていないと、その年俸に残業代が含まれていることを証明できず、年俸の他に残業代を払うことになります。
また、賃金に関する時効は2年ですから、残業代未払いと判断された場合、2年前までさかのぼって残業代を支払う必要があります。」
上場社長 「残業代2年分も! これは大変だ。すぐに対策を打たなければ。」
ドットちゃん 「社長、私はいつも終電近くまで仕事しているんですよ。残業代払ってください。」
みやじぃ 「おっと、ドットちゃんは管理職でしょ。それも株式公開室長として、社長と一体になって仕事をしているんだよね。」
ドットちゃん 「そうですよ。」
みやじぃ 「労働基準法で、管理監督者と機密の事務を取り扱う者は残業や労働時間に関する規定は除外されているんですよ。
ドットちゃんは、この労働基準法の管理監督者に該当するから、残業代を払わなくていい人に該当するんだよ。」
ドットちゃん 「なーんだ。がっかり。でも、私はともかく、残業代2年分って、すごい話になっちゃいましたね。まずは、対策を練る必要がありますね。みやじぃさん、よろしくお願いします。」
みやじぃ 「いいですけど、またドットちゃんの仕事が増えちゃいましたね。」
ドットちゃん 「はっ、これも残業ですか・・・。とほほ・・・。」

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