労務管理解説
第1回「年俸制の落とし穴〜年俸制でも残業代の支払は必要?〜」 |
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「いつも終電近くまでお仕事されているんですね。」 |
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「どうしてわかったんですか?」 |
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「この前深夜にメールしたときに、すぐに返事してくれたでしょ?」 |
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「あー、あのときですね。思い出しました。毎日毎日、規程整備だの資本政策だの予実管理だの、やらないといけないことがたくさんあり過ぎて。こんなに上場準備ってやることがたくさんあるなんて思わなかったです。こんなのが上場するまで続くなんて考えたくないわ・・・」 |
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「遅くまで大変ですね。それも毎日ですか。そういえば、この前、たまたま深夜に御社の前を通ったんだけど。どの部署も電気がついていたね。みなさん、あんなに遅い時間まで仕事しているんですか?」 |
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「そうですよ。特に営業のひとはほとんどが終電で帰っているそうですよ。私もそれに近い状況ですけど。」 |
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「そんなにみんなに残業をやらせていたら、残業代をたくさん払うことになって、人件費がかさんじゃうんじゃないですか?」 |
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「ご心配いただき有り難うございます。その心配はいりませんわ。だって、当社は全従業員が年俸制をとっているでしょ。だから、残業代は払わなくていいの。」 |
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「え? 年俸制といったって、労働基準法では管理監督者といわれる管理職以外の人たちに残業代を払わなかったら法律違反になるんですよ。」 |
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「えぇっ!だって、うちの社長は年俸制で給与を支払えば残業代をはらう必要がないって言ってましたよ。プロ野球選手やJリーガーみたいに成績に応じて払えば問題ないって。そもそも、残業代を払わなくてもいいようにって、2年前に年俸制を導入したんですから。」 |
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「年俸制だから残業代がいらないなんて大きな間違いです。ここのところ、結構勘違いしている会社さん、すくなくないんですよね。これ、場合によっては莫大な金額の残業代をさかのぼって支払う可能性がありますよ。」 |
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「えぇっっ! そ、そんな・・・。いま急に莫大な残業代を支払えといわれても、資金繰り的に無理です。それに決算に与える影響が大きすぎて、このままでは赤字になっちゃうぅ...。どうしよう。」 |
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「ともかく、この件をさっそく社長にお伝えしていただけますか? 下手をすると、上場延期につながりかねない問題ですから。」 |
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「えぇ。もちろんですとも。」 |