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 会社法解説 第1回「機関編その2」
 <機関ってなに?>
コムさん 「法人の意思決定をしたり代表をしたりする者や組織をいいます。」
上場社長 「なーんだ、代表取締役のことね。難しい言い方するから分からなかったよ。」
コムさん 「うーん、代表取締役は機関の一つに過ぎませんよ。他に思いつきませんか?」
上場社長 「だって、この会社では私が意思決定をしてますし、私が会社を代表していますよ。」
コムさん 「社長には会社の仕組みからお話しした方が良さそうですね。まず、株式会社の根本的な意思決定をするのは、株主総会です。株主総会という機関が会社がどうあるべきか、について意思決定を下すんです。社長はご自身がオーナー株主でもあるから、その辺が曖昧になってらっしゃるかもしれませんが、株主総会が大枠を決めて、その大枠の範囲内で委任を受けた取締役が、具体的な意思決定をしていくわけです。正確には取締役会が具体的な意思決定を行います。取締役は取締役会の構成員という位置づけです。取締役会が決めたことを実現に移す人も必要ですよね。それが、代表取締役です。取締役の中には代表権のある者と代表権のない者がいることになります。そして、取締役が暴走しないように、取締役の職務の執行を監査する人も必要となります。これが監査役です。大きな会社では会計監査人を選任するとともに監査役が3人以上集まり監査役会を作ることになります。これが、株式会社の機関の基本形です。」

 <取締役1人でOK!でも・・・>
ドットちゃん 「株主総会→取締役会→代表取締役という具合に、監督関係が連鎖していく訳ね。それに加えて、監査役・会計監査人が取締役を監査すると。『基本形』ということは例外もあるわけですね。」
コムさん 「そうです。委員会設置会社なんか例外の典型例です。また、会社法が施行されてから、取締役会や監査役を設置しないことも条件付で認められることとなりました。いままでのような、株式会社の設立に際して、社長に社長の親族2人を加えて取締役3人を確保して、さらに奥さんに監査役になってもらうなんていう、人数あわせは不要になったわけです。もちろん、条件付ですが。」
上場社長 「その「条件」とはなんでしょうか? 当社も、たとえばの話、私一人が取締役で、監査役はゼロ、なんて作りにすることができますか?」
コムさん 「取締役会を設置しないことができる条件は、
・公開会社でないこと
・監査役会を設置していないこと
・委員会設置会社でないこと
の3つを満たす必要があります。御社は委員会設置会社ではないので、3つめの条件はクリアですね。また、監査役会も設置していないので、2つめの条件もクリアしていますね。1つめの条件の「公開会社」ですが、「その発行する全部又は一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社」をいいます。御社の場合、普通株式しか発行していませんし、定款には株式の譲渡制限がついていますので、公開会社には該当しないことになります。1つめの条件もクリアですね。ということは、取締役会を置かずに社長一人が取締役という機関設計が可能です。その場合、御社は大会社には該当しないことから、監査役を置かないという選択も可能です。」
上場社長 「それは、いいことを聞いた。さっそく検討しよう。」
コムさん 「ちょっと、待ってください。御社は上場を考えてらっしゃるんですよね。であれば、機関設計を簡素化していくプランは採用しない方が良いですよ。確かに機関設計を簡素化するメリットはありますが、上場という観点からはコーポレート・ガバナンスが低下してしまうデメリットの方が心配されます。主幹事証券会社にいわれて、あわてて取締役会・監査役を設置するようだと、証券会社に「運用状況を確認しましょう」なんていわれて、そこから2〜3年待たされますよ。上場準備会社に限っていえば、会社法施行にあわせて、機関設計を簡素化することは避けるべきといえます。」
ドットちゃん 「会社法で可能になったといっても、上場準備会社でそれを採用できるかどうかは別問題ってことね。」

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