目次 第3部 Q&A


第3部 現物課税の取扱い

Q 新幹線通勤の取扱い

 当社の従業員の中には遠方から通勤しているものもおり、交通手段として新幹線を利用しております。これら従業員には「新幹線定期代金(フレックス定期代)」を毎月支給していますが、この「新幹線定期代金(フレックス定期代)」も非課税の「通勤手当」となりますか?


 「新幹線定期代金(フレックス定期代)」も通常の定期と同様に扱われるので、月額10万円までは所得税、住民税は課税されません。

 ただし、月額10万円を超える金額がある場合には、その超える部分の金額には所得税、住民税が課税されます。

 たとえば、「新幹線定期代金(フレックス定期代)」が月々15万円の場合、10万円を超える5万円部分(年間では60万円:5万円×12か月)は給与所得になり、所得税、住民税が課税されます。


Q グリーン車通勤について

 当社の社長は、従来「社用車」で通勤していましたが、経費節減のため、「社用車」を廃止し、電車通勤に切り替えようと考えています。ところで、当社社長は通勤に「東海道線」を使用しますが、混雑が非常に激しく、仕事にも差し障りがあるため「グリーン定期券」を購入し、グリーン車を利用しようと考えています。この「グリーン定期券」の代金も非課税の「通勤手当」として処理できますか?


 残念ながら、お尋ねの「グリーン定期券」は非課税の「通勤手当」とは認められていません。一般の通勤定期代とグリーン定期代との差額が社長に対する役員給与となり、所得税、住民税が課税されます。

 この金額は「定期同額給与」に該当するので、原則として法人税の損金になります。

 なお、出張の際に社長など役員の方が「グリーン車」を使用することは認められます。


Q 「残業食事手当」の取扱い

 当社では従業員の残業が多く、社員の多くが会社または会社の近くのお店で夕食をとっています。自己負担をさせるのもかわいそうなので、今後「残業食事手当」を従業員1人当たり月2万円支給しようと考えていますが、この「残業食事手当」の所得税、住民税は非課税になりますか?


 「残業食事代」が非課税になるのは、以下のような実費弁済が行われた場合に限られます。

(イ)  会社が「出前」などを取り、その代金を会社が直接支払う
(ロ)  従業員が「残業食事代」を立て替え、後日領収書やレシートにより会社が精算を行う(たとえば、毎週や毎月、月2回など実費精算を行う)

 御社のケースのように実費精算が面倒などの理由で「残業食事手当」として金銭で支給すると、従業員などに対する給与となり、所得税、住民税が課税されるのでご注意ください。


Q 社員旅行不参加者に対する現金支給

 このたび当社では、社員旅行で近隣の温泉に行く予定でいます。ところが、業務の都合でどうしても社員旅行に参加できない者が2名出ました。会社の都合でやむを得ず参加できないことから、この2名には旅行代金相当の3万円を現金で支給したいと考えています。

 ところで聞くところによると、社員旅行不参加者に旅行相当の現金を支給すると、旅行参加者も含めて全員が給与課税されると聞きましたが、当社のケースも全員給与課税になりますか?


 個人的な事情による社員旅行不参加者に対して旅行代金相当額を支給する場合には、ご指摘のように、社員旅行不参加者のみならず、旅行参加者も含め全員が給与課税されます。

 ただし、御社のケースのように会社の業務でやむを得ず社員旅行に参加できない者にだけ現金支給している場合には、その社員旅行に不参加で現金支給を受けた方は給与課税されますが、社員旅行に参加した方は課税されません。


Q 職務上必要な資格を取得するための費用

 当社は「有料老人ホーム」を経営しています。従業員には、勤続年数および経験などを考慮し、様々な介護の資格を所得することを奨励しています。

 この介護の資格のための研修費や受験料は会社が負担していますが、これらの費用負担は従業員の所得税、住民税では非課税扱いでよろしいでしょうか?


 会社が業務の遂行上の必要に基づき、役員、従業員に職務に直接必要な技術・知識を習得させ、または免許・資格を取得させるための研修会・講習会などの出席費用や、大学などでの聴講費用には、所得税および住民税は課税されません。

 御社が負担する介護の資格のための研修費や受験料も上記に該当するので、従業員の方に課税されることはありません。


Q 従業員に対する社宅の取扱い

 当社では、従業員にも社宅を提供しています。この場合、従業員から受領する社宅家賃をどのように設定すればよいでしょうか?

 また会社の都合で、家族と離れて単身赴任させる場合もありますが、この場合にも従業員から家賃を徴収する必要はありますか?


 会社が従業員など使用人に貸与する社宅の通常の賃貸料は、4の「役員に貸与する小規模社宅」の賃貸料と同じになります。(従業員の場合、家屋の広さは関係ありません。)

 ・ 家賃相当額
  (家屋の固定資産税の課税標準額)×0.2%+12円× 家屋の延床面積(平方メートル)

3.3(平方メートル)

 ・ 地代相当額
  敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%
  通常の賃貸料の額(月額)= 家賃相当額 + 地代相当額

 この場合、従業員からまったく社宅家賃を徴収していない場合には上記の「通常の賃貸料の額」が給与課税されますが、従業員から「通常の賃貸料の額」の50%相当額以上を徴収している場合には、その差額(経済的利益)は給与課税されません。

 なお、個々の社宅ごとに「通常の賃貸料の額」の50%以上を徴収していなくても全体(計算が困難な場合には、1か所、または数か所の事業所ごと)として「通常の賃貸料の額」の50%以上を徴収していれば課税されません。(いわゆる「プール計算」が認められます。)

 また、会社などが所有している社宅や寮などを貸与する場合に限らず、他から借りて貸与する場合でも、支払家賃にかかわらず上記の計算になります。

 したがって、他から借り受けた社宅や寮などを貸す場合にも、貸主等から固定資産税の課税標準額などを確認することが必要です。

 会社の都合による単身赴任者や、看護師や守衛など仕事を行ううえで勤務場所を離れて住むことが困難な従業員に対して、仕事に従事させる都合上社宅や寮を貸与する場合には、無償で貸与しても給与として課税されません。

 

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