目次 第3部


第3部 現物課税の取扱い

1 永年勤続者に支給する表彰記念品の取扱い

 永く勤めている人への旅行の招待費用や記念品代は、次の目安を満たすものであれば、会社側では、福利厚生費として経費に落とすことができますし、受け取る従業員側では所得税や住民税がかかることはありません。

 (イ)  勤続期間が大体10年以上の人に対する記念旅行や記念品などが該当します。2回以上表彰を受ける人については、約5年以上の間隔をおいていること、たとえば、10年、15年、20年という区切りをいいます。

 (ロ) 旅行費用等は、勤続年数10年で 5万円
            〃  20年で10万円
            〃  25年で15万円
            〃  30年で20万円 程度の金額であること。

 また、贈呈する物の種類によって課税されることがあります。

 (イ)  お金、商品券で渡した場合
 全額を給与(賞与)として処理します。

 (ロ)  ギフト旅行券で渡す場合
 旅行券を渡してから約1年以内にその旅行券を使って旅行した場合は、福利厚生費として処理します。
 1年を超えても旅行に行っておらず、その旅行券も回収していない場合は、その全額が給与(または賞与)として扱われることとなります。
 旅行券で渡すときは、その使用状況を管理することが必要となります。


2 役員、従業員に対する「昼食代」「残業食事代」の取扱い

1.「昼食代」の取扱い

 食事の価額の半額以上を役員または従業員が負担し、かつ、会社など使用者の負担が消費税抜きで月額3,500円(消費税抜きの金額)以下である場合には、課税されません。


2.「残業食事代」の取扱い

 会社などの使用者が、残業または宿日直をした役員または従業員(通常の勤務時間外における勤務を行った者に限られます。)に対し支給する残業食事代は、課税されません。(回数制限はありません。)


3 役員、従業員に対する「通勤手当」「社員旅行費用」「出張旅費」「研修費」の取扱い

1.「通勤手当」の取扱い

 交通機関、有料道路を利用している人に支給する通勤手当で最も経済的、かつ、合理的と認められる金額は課税されません。(1か月 最高限度10万円)

マイカーなどで通勤している人の非課税となる
1か月当たりの限度額の表
通勤距離 1か月当たりの限度額
 2km以上10km未満 4,100円
10km以上15km未満 6,500円
15km以上25km未満 11,300円
25km以上35km未満 16,100円
35km以上45km未満 20,900円
45km以上 24,500円


2.「社員旅行費用」の取扱い

 社員旅行費用は、以下の要件を満たせば交際費には該当せず、福利厚生費として費用(損金)になり、役員および従業員にも所得税、住民税が課税されることはありません。

 (イ)  旅行期間が4泊5日以内のものであること
 目的地が海外の場合には、目的地における滞在日数とします。たとえば、ハワイ旅行4泊6日の場合、現地では4泊5日となるので、要件を満たすことになります。

 (ロ)  旅行に参加する従業員の数は、全従業員(工場、支店等で行う場合には、この工場、支店などの従業員の合計人数)の50%以上であること(ただし、最初から特定の人だけを対象としたものは、たとえ従業員の50%以上が参加しても機会均等ではないので「交際費」になります。)

 また次の点にもご注意ください。この社員旅行の取扱いは、福利厚生として一般に行われる新年会、忘年会またはボーリング大会などの、簡易なレクリエーションに参加した場合の取扱いと同様のものです。

 したがって、上記(イ)(ロ)のポイントを形式的に満たしていても、高額な慰安旅行の場合には、給与として処理され、役員、従業員に所得税、住民税が課税されるので、最大でも会社負担分が10万円前後になるように実施してください。(最近の例では、1人18万円で否認され、従業員側に所得税、住民税が課税されています。)


3.「出張旅費」の取扱い

 職務上または転任に伴う転居などのための旅行に必要な支出に充てるための交通費、宿泊代、日当、引っ越し代など、その旅行に通常必要な金額は課税されません。


4.「研修費」の取扱い

 会社が業務の遂行上の必要に基づき、役員、従業員に職務に直接必要な技術、知識を習得させ、または免許、資格を取得させるための研修会、講習会などの出席費用や、大学などの聴講費用には、所得税および住民税は課税されません。


4 役員社宅の取扱い

 会社が役員に対して貸与した住宅(社宅)に係る通常の賃貸料の額(月額)は、その社宅の広さに応じ、次のように計算されます。

 会社がこの通常の賃貸料の額(月額)を役員から徴収していない場合には、その差額が、その役員に対する給与として取り扱われるので、役員に対して所得税、住民税が課税されます。


1.小規模住宅(社宅)の場合

食事の価額の半額以上を役員または従業員が負担し、かつ、会社など使用者の負担が消費税抜きで月額3,500円(消費税抜きの金額)以下である場合には、課税されません。

◎家屋の床面積が132平方メートル(木造以外の家屋については99平方メートル)以下の社宅

 ・ 家賃相当額
  (家屋の固定資産税の課税標準額)×0.2%+12円× 家屋の延床面積(平方メートル)

3.3(平方メートル)

 ・ 地代相当額
  敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%
  通常の賃貸料の額(月額)= 家賃相当額 + 地代相当額


2.小規模住宅(社宅)以外の場合

◎小規模住宅(社宅)および豪華な社宅のいずれにも該当しない場合

 ・ 家賃相当額
  (家屋の固定資産税の課税標準額)×12%(*)×

12
  (*) 木造家屋以外の家屋は10%

 ・ 地代相当額
  敷地の固定資産税の課税標準額×6%×

12
  通常の賃貸料の額(月額)= 家賃相当額 + 地代相当額

◎借上げ社宅の場合
 ・ 上記の通常の賃貸料 のいずれか多い金額になります。
 ・ 借上げ社宅の賃貸料の50%


3.豪華な社宅の場合

 ・家屋の床面積が、240平方メートルを超える社宅
 ・ 家屋の床面積が、240平方メートル以下であっても、プールや茶室など役員個人の趣味嗜好が反映された設備を有する社宅

 周辺の家賃相場などから、その社宅を第三者に貸与した場合に見込まれる賃貸料(実勢価額)を会社が役員から徴収する必要があります。

 

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