目次 PART4 4-1


 PART4 国際税法を学ぶ

 4.1 国際税法の基礎

 日本国内だけで働いている場合やビジネス活動をしている場合には、わが国の税法の枠内で税金問題を考えればいいわけです。しかし、今日、人事交流やビジネス活動の国際化が急速に進むなか、税金問題を、わが国の税法はもちろんのこと、相手国の税法や租税条約を見ないで考えるのは難しくなってきました。例えば、勤め先の企業からアメリカの支店に派遣されたとします。この場合で、アメリカで給料をもらい、日本にある自宅を賃貸し、家賃の送金を受けたときには、どこで、どういった税金を払えばいいのか、といった問題に遭遇するかもしれません。また、日本の親会社とアメリカの支店との間での課税はどうなるのか、尋ねられるかもしれません。

 国際税法(ないしは国際租税法)は、こうしたグローバルな税金問題を解決するに必要な法体系、課税ルールをさします。したがって、国際税法という単独の法律があるわけではありません。

 これまでの国際税法は、どちらかといえば、国境の存在を前提とした「現実空間(real space)」でのモノやサービスの移動にかかる課税をめぐる課題が中心を占めていました。しかし、近年、インターネットとパソコンで結ばれた、国境の存在を前提としないあるいは国境越えの「電脳空間(cyber space)」での取引が拡大しています。こうしたグローバルな電子商取引に対してどのように課税するかは、国際税法上の最大の課題となっています。

 

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