目次 PART3 3-1-1


 3.1.1 所得税の基本

ポイント

 所得税は、個人のみにかかる申告所得税(所得税)と個人以外にもかかる源泉所得税(源泉税)とに分けて学ぶ必要があります。


◎申告所得税(所得税)と源泉所得税(源泉税)とはどう違うか

 わが国において「所得」に課される国の税金(国税)は、税金の納付の方法により、「申告所得税」と「源泉所得税」とに分けられます。

 申告所得税は、“個人”に課される場合には、「所得税」とよばれます。主に「所得税法」に基づいて課税されます。一方、申告所得税は、会社や協同組合などの“法人”や、代表者のいる市民団体や互助会などで法人でない団体(人格のない社団等)にも課されます。この場合には、「法人税」とよばれ、主に「法人税法」に基づいて課税されます(2.1.1)*。 これに対して、源泉徴収、つまり支払のときに支払者が支払う額から天引徴収しなければならない税金は、その支払をするものが、個人、法人、人格のない社団等のいずれの場合でも、「源泉所得税」とよばれます(5.1.1)*。源泉所得税(あるいは源泉税)は、「所得税法」に基づいて課税されます。つまり、源泉所得税の課税にあたっては、個人のみならず、法人などにも所得税法が適用になるわけです。

 個人の申告所得税と源泉所得税とは、同じ所得税法の体系のなかに定められています。しかし、税金を確定する方法は、前者は申告納税方式、後者は自動確定方式と、まったく違っています(5.1.1)*。また、源泉所得税は、国際課税(非居住者課税・外国法人課税)にも幅広く用いられています(4.2.2)*

 本書では、個人の所得に対する申告方式の税金は、所得税とよぶことにします。一方、源泉徴収される税金は、源泉所得税(源泉税)とよぶことにします。

申告所得税  
個人の場合 :「所得税法」で“所得税”として課税
法人などの場合 :「法人税法」で“法人税”として課税

源泉所得税
 
個人・法人など双方の場合 「所得税法」で“源泉所得税”として課税


◎個人の10種類の「所得」に課される所得税(申告所得税)

 所得税とは、個人が1月1日から12月31日までの1暦年に稼いだ「所得」に対して課される税金です。後で詳しくふれますが、所得税法上、「所得」は、次の10種類に分かれています(3.1.4)*

丸数字1利子所得、丸数字2配当所得、丸数字3不動産所得、丸数字4事業所得、丸数字5給与所得、丸数字6退職所得、丸数字7山林所得、丸数字8譲渡所得、丸数字9一時所得、丸数字10雑所得


◎4種類に区分され、各種の所得にかかる源泉所得税(源泉税)

 源泉所得税(源泉税)は、天引徴収を受けるもの(支払を受けるもの)を基準にすると、次の4種類に分かれています。

丸数字1居住者(3.1.2)*にかかるもの、丸数字2非居住者(3.1.2)*にかかるもの、丸数字3内国法人(2.1.1)*にかかるもの、丸数字4外国法人(2.1.1)*かかるもの

 この辺は、少し専門的すぎるかもしれません。ただ、参考までに、どのような種類の所得が、源泉所得税の課税を受けるかについて、やさしく図表にすると、次のとおりです。

●源泉所得税のあらまし 〈○は支払者が源泉課税の必要あり〉
     支払を受けるもの

所得の種類
個 人 法 人
居住者 非居住者 内国法人 外国法人
公社債、預金等の利子
貸付金の利子    
配 当
不動産等の賃貸料    
給料、賃金、賞与    
退職手当    
職業専門家に対する報酬
使用料  
賃貸料    
賞 金
年 金  


◎所得税法の基本的な骨格

 所得税を学ぶ場合、所得税法(1965(昭和40)年法律35号)の基本的な法構造を知っておくことは、基礎知識として大事です。所得税の基本的な骨格を図示すると、次のとおりです。

●所得税法の基本的な骨格
  タイトル 各章のタイトル

第1編 総則
丸数字1丸数字5章)
丸数字1通則(所税法1〜4)、丸数字2納税義務(5・6)、丸数字2の2法人課税信託の受託者等に関する通則(6の2・6の3)、丸数字3課税所得の範囲(7〜11)、丸数字4所得の帰属に関する通則(12〜14)、丸数字5納税地(15〜20)
第2編 居住者の
納税義務
丸数字1丸数字7章)
丸数字1通則(21)、丸数字2課税標準及びその計算並びに所得控除(22〜87)、丸数字3税額の計算(89〜92)、丸数字4税額の計算の特例(102・103)、丸数字5申告、納付及び還付(104〜151)、丸数字6更正の請求の特例(152・153)、丸数字7更正及び決定(154〜160)
第3編 非居住者
及び法人
の納税義務
丸数字1丸数字3章)
丸数字1国内源泉所得(161〜163)、丸数字2非居住者の納税義務(164〜173)、丸数字3法人の納税義務(174〜180の2)
第4編 源泉徴収
丸数字1丸数字7章)
丸数字1利子所得及び配当所得(181・182)、丸数字2給与所得(183〜198)、丸数字3退職所得(199〜203)、丸数字3-2公的年金等(203の2〜203の6)、丸数字4報酬、料金等(204〜211)、丸数字5非居住者又は法人の所得(212〜215)、丸数字6源泉徴収に係る所得税の納期の特例(216〜219)、丸数字7源泉徴収に係る所得税の納付及び徴収(220〜223)
第5編 雑則
丸数字1丸数字2章)
丸数字1支払調書の提出等の義務(224〜231)、丸数字2その他の雑則(231の2〜237)
第6編 罰則 (238〜243)
 附則


 

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