PART2 2-5-2 |
2.5.2 事業税とはどのような税金か |
事業税とは、個人が行う一定の事業や法人の事業に対し、その事業の事務所またはその所在する都道府県が課す税金です。一般に、個人事業税、法人事業税とよばれています。法人事業税は、大法人については、所得割や収入割等に加え、外形標準(付加価値割や資本割)で課税されます。また、地方法人特別税が導入され、暫定的に都市圏の法人事業税収の一部が地方圏の道府県に再分配されます。 ◎応益課税原則と事業税課税の基礎 事業税は、都道府県が課税する普通税であり、企業活動に対する税金です。個人事業税と法人事業税とがあります。現在の事業税は、事業から生ずる所得を課税標準としています。 しかし、課税物件は「事業」そのものとしています(地税法72の2)から、応益課税の原則からみれば、他の課税標準を考慮することも可能なわけです。それが外形標準課税の問題です。住民税とは別に、事業税が賦課課税される根拠としては、この応益課税の考えがあるといえます。 ◎個人事業税のあらまし 個人事業税は、都道府県内に事業所を持つ一定の事業を行っている個人に対し課税されます(地税法72の2)。課税対象業種の区分および標準税率は次のとおりです(地税法72の49の17)。 ●事業税が課される業種と標準税率
税額の計算は、事業の所得(所得税における事業所得、不動産所得)が基礎となり、これから事業専従者控除額(青色事業専従者給与額または白色申告者にかかる事業専従者控除額)、損失の繰越控除額、事業主控除額(年額290万円)を控除し、その業種にかかる税率を乗じてします(地税法72の49の11・72の49の12・72の49の14)。 個人事業税は、納税義務者の課税標準申告に基づき、都道府県が税額を計算し納税者に通知する普通徴収(賦課課税)方式(5.2.2)*で課税されます(地税法72の49の18)。申告期限は3月15日までです(地税法72の55)。ただし、所得税の確定申告書または住民税の申告書を提出した人は個人事業税の申告をしたこととなり、改めて申告する必要はありません(地税法72の55の2)。 ちなみに、個人事業税は、所得税における事業所得(3.2.2)*、不動産所得(3.2.3)*、山林所得(3.2.7)*、雑所得(3.2.10)*の計算上、個人住民税(2.5.2.1)*とは異なり、必要経費として控除することが認められています(所税法45四)。 ◎法人事業税のあらまし 法人事業税は、原則として、法人が行うすべての事業(課税客体)を対象に、その事務所または事業所が置かれている都道府県(課税団体)において、その法人(納税義務者)に対して課されます(地税法72の2)。法人事業税の課税標準としては、「付加価値割」や「資本割」のような外形基準のほか、「所得割」、「特定信託所得割」、「収入割」の5つが用いられています。税額は、法人の区分に応じて定められている課税標準に税率をかけて計算します。 法人区分に基づく法人事業税の課税標準と標準税率を図示すると、次のとおりです(地税法72の2、72の12、72の24の7、地方法人特別税法2)。 ●法人区分に基づく課税標準と標準税率のあらまし
法人事業税の課税標準である所得割額は、所得割を基準に計算しますが、基本的には国税である法人税の所得をベースに算出します。また、外形標準課税対象法人(上記図表_資本金1億円超の普通法人)の課税標準には、所得基準に基づいた所得割額に、外形基準に基づいた付加価値割額と資本割額が加わるのが特徴です。 2以上の都道府県に事務所または事業所を設けて事業を行っている法人については、それぞれの都道府県が課税できることになっています。この場合、一定の分割基準を用いて分割・調整することになっています。なお、法人税において連結納税の適用承認を得ている法人(2.1.14)*の場合も、事業税の課税単位は、個々の法人(個別所得金額)になります。法人事業税も、原則として、事業年度終了の日の翌日から2ヵ月以内に申告納付の方法で徴収されます。 ちなみに、法人事業税は、法人税における所得の計算上、法人住民税(2.5.2.1)*とは異なり、損金算入(2.1.5)*が認められています(法税法38二)。 ◎地方法人特別税の創設 平成20年度の税制改正で、地方法人税等に関する暫定措置法(地方法人特別税法)が制定され、国税としての「地方法人特別税」が新たに設けられました。この税金は、都市圏に偏在している法人事業税収の一部(法人事業税の約2分の1相当額)を、地方特別譲与税の形で、地方圏の道府県に使途を特定しない一般財源として配分しようという趣旨の暫定税です(地方法人特別税法1)。 地方法人特別税は、申告納付の国税でありながら(同6)、都道府県(地方)が賦課徴収した税収を国に払い込む仕組みになっています(同10、11、12)。こうした仕組みの税金が、“賦課徴収する主体”に応じて国税か地方税かの線引きをすることを難しくしているといえます(1.2.8)*。地方法人特別税の骨子を図示すると次のとおりです。 ●地方法人特別税の骨子
◎企業課税としての事業税 安定財源の確保も大切ですが、事業税が企業課税であるとの認識も重要です。企業課税として所得税、法人税、住民税、事業所税などとの関連も視野に入れて、企業課税全体のなかでの事業税を検討すべきです。住民税は、所得税や法人税の計算上経費・損金算入が認められていませんが、事業税は認められています。ここには収益税としての一貫性がありません。事業税の課税根拠を税法学的に再検討する必要があるといえます。 |
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