目次 PART1 1-1


 PART1 税法の基礎知識を学ぶ

 1.1 税法学をどう学べばよいのか

 税法学は、租税について法律学的な観点から学ぶ学問分野です。税法学は、財政学や租税政策学、さらには会計学や税務会計論などと密接に関連しています。また、行政法や民法、会社法などさまざまな法律分野の知識も必要となります。

 これまで、わが国の大学における法学教育では、学生全員が研究者になることを前提としたような内容で教えられてきたきらいがあります。税法学の教育現場でも、抽象的な法理論が重視され、そうした法理論に即した現実の税務や法制などを含む実定法についての基礎的な教育が後回しにされてきた感じがします。しかし、大学教育の大衆化とともに、もっと身近な内容での実学教育が求められるようになってきました。この傾向に拍車をかけたのが、ケースメソッド(事例研究)の教育を中心としたアメリカ型のロースクール(法科大学院・専門職大学院)の導入です。

 もちろん、ケースメソッド中心の法学教育には批判もあります。とくに、学部学生にいきなりケースメソッドでは、消化不良を起こしかねないからです。やはり、学部学生の場合は、税法の基本原則に加え、くらしに身近な所得税法(PART3)や相続税法(2.3)などを中心にそのベーシックな法制度をしっかり学ぶことが大事です。

 ただ、実学に大きく傾斜してきているわが国での税法学教育の進化を的確に読み取る必要があります。したがって、「税法学」教育では、税法令の解釈はもちろんのこと、税法に関する国税庁の出す通達や事務運営指針(1.4.6)、国税不服審判所の裁決(6.3)、裁判所の判決(6.5)などを幅広く学ぶ必要があります。とりわけ、新司法試験では、租税法の基本原則(PART1)、所得税法(PART3)、法人税法(2.1)、租税手続法(PART5)および租税救済法(PART6)の分野が重視されます。ロースクール(法科大学院)で学び、将来、税法務の専門職をめざす学生は、こうした点についても留意して欲しいところです。また、研究大学院(法学研究科など)で学び、税理士など税務の専門職(1.6.5)をめざす学生の場合は、税理士試験科目にかかる実定法の論文を仕上げる必要があります。税法学を学ぶ場合には、こうした点についても留意して欲しいところです。


 

目次 次ページ