2事業年度にまたがって支出した場合の判定 |
12月決算であるA社は、防犯上の理由から、本社建物の窓全部に、アルミの格子を取り付ける作業を進めています。総費用は200万円ですが、12月に1階部分の取付け工事が終了しましたので、その工事代金19万5千円を年内に業者に支払いました。
残りの部分については、翌期に工事を行っています。
A社は、12月に支払った工事代金を当期の修繕費として処理しています。
窓にアルミの格子を取り付ける作業は、建物に対する資本的支出に該当します。また、金額面からみても、年内に行った作業部分については、20万円未満ですが、工事全体から判断すると、総額200万円と、20万円以上の工事であり、当期に行った工事もその一部分と認められます。
したがって、当期の工事代金についても資本的支出とすべきです。
事業年度ごとに判定すれば、年内に取付けに要した工事代金は、20万円未満であり、修繕費になります。
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調査官の指摘は誤りであり、当期の修繕費となります。
建物の窓に、アルミの格子を取り付ける作業に対し支出された金額は、建物にアルミの格子を物理的に付加するものであり、調査官の指摘どおり、資本的支出に該当します。
しかし、金額をみますと、確かに、工事全体では、その工事費用の総額は200万円以上ですが、当期に係る金額は20万円未満となっています。
一の修理・改良等のために要した金額が20万円未満の場合には、その修理・改良等の内容にかかわらず修繕費として処理できることになっています。
この場合の20万円未満かどうかの判定において、本事例のように、その一の修理・改良等が2以上の事業年度にわたって行われるときは、各事業年度ごとに要した金額ごとに判定することとされています。
ある修理・改良等の工事が、明らかに資本的支出に該当する場合であっても、一の修理・改良等に要した金額が20万円未満の少額なものであれば修繕費として処理できること、及びその判定は、各事業年度ごとに行えることに留意しておいてください。
また、税法改正により、平成10年4月1日以後開始する事業年度から、減価償却資産の取得価額金額を取得時の損金とできる少額減価償却資産の取得価額基準が、20万円未満から10万円未満に引き下げられました。しかし、本事例のような一の修理・改良等における少額かどうかの判定基準は20万円のままですのでご注意ください。
なお、本事例のアルミ格子の取付けのように、資本的支出に該当するものとして、次に掲げるものが例示されています。
(1) |
建物の避難階段の取付け等物理的に付加した部分に係る費用の額 |
(2) |
用途変更のための模様替え等改造・改装に直接要した費用の額 |
(3) |
機械の部分品を特に品質又は性能の高いものに取り替えた場合において、通常の取替えに要すると認められる費用の額を超える部分の金額 |
【参考法令】 |
法基通7−8−3(少額又は周期の短い費用の損金算入)
法基通7−8−1(資本的支出の例示) |
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