目次 II−1


II.敵対的買収への対応

 敵対的買収とは、経営陣の同意を得られない買収をいう
 上場会社では、ライツプラン特に事前警言型を中心に導入されている。
 中長期において株主に対する利益還元(配当と株主価値向上)をすすめることが結果として、敵対的買収防衛策となる。


1 敵対的買収とは

1 敵対的買収の定義

 ライブドアによるニッポン放送に対する株式買占め事件以降、敵対的買収に対する関心が高まりました。この事件は、旧商法で実施されたものであり、本来、会社法の施行とは、直接的な関係はなかったのですが、経済界に対する配慮から、外資等による敵対的買収等に対する防衛策の準備期間を設けるため、会社法施行後1年間、対価柔軟化に関する規定が凍結され平成19年5月1日から施行されました。

 敵対的買収とは、対象会社の経営陣の同意を得ないで、経営の支配権の獲得をするものと考えます。したがって、経営陣に対して敵対的買収であったとしても、現経営陣が株主に対する利益還元つまり、配当と株主価値の向上に前向きな努力をせずに現状維持の経営に満足し、会社を私物化し、株主に経営陣の交代待望論がある場合には、経営陣にとっては敵対的であったとしても、株主レベルでは、敵対的ではないことが十分ありうることになります。したがって、株主から委任を受けている経営陣が、敵対的買収がどうかを判断するにあたり、経営陣にとって敵対的であることは関係なく、あくまで、株主の立場から敵対的であるかどうか判断することが最も重要となります。


2 買収者の種類

 企業買収者は、ストラテジック・バイヤーとフィナンシャル・バイヤーに区分されます。ストラテジック・バイヤーとは、自社の事業戦略(競争力強化、経営合理化、シナジー効果、市場拡大など)上の必要性から買収を行う者のことです。彼らは、自社グループの事業との関連性で企業買収を実施することになります。

 これに対して、フィナンシャル・バイヤーは、事業戦略との関連性なく純粋に資金運用の結果としてのキャピタルゲインを稼得することを目的とする買収者のことをいいます。自己資金で実施する場合もありますが、通常は、ファンド形態によって活動しているケースが多いとされています。

 これと類似する買収者に、グリーンメイラーがあります。彼らは、敵対的な買収を仕掛け、買い集めた対象企業の株式を、その企業または関係者に高値で買い取るように求める者のことをいいます。グリーンメーラーの由来は、ドル紙幣の色のグリーンとブラックメール(脅迫状)との連想から来ているといわれています。経営陣に敵対的な買収者が表れた場合に、グリーンメイラーであるかどうかの判断は、明確な投資戦略がなく会社等に高値での株式の買取の要求をする行為が顕在化して初めて、判明することになります。

 友好的でなく、敵対的に企業買収を仕掛けるものは、経営陣からすればすべてグリーンメイラーと考えられますが、経営陣は、株主への利益還元を委任されているため、敵対的買収者の提案内容を十分検討し、株主の利益になるかを判断することになります。

 

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