目次 I−12


12 社外取締役制度

 社外取締役の要件は、現在および過去においても会社または子会社の業務執行取締役、執行役、支配人、使用人でないこと。
 委員会設置会社、特別取締役による取締役会決議の定めを置く会社には社外取締役が必須である。
 社外取締役の機能は経営監視である。
 定款の定めにより責任の軽減を図ることができる。


1 資格要件

 社外取締役制度は、米国において1970年代に起こった不祥事の後、社外取締役を取締役会の中に取り入れて経営を監視させようということが契機になって、多くの企業が採用するようになりました。日本にも社外取締役は存在していましたが、積極的に経営監視のために招聘したのではなく、経営者が大所高所から経営のプロにアドバイスを受けることが目的でした。

 会社法では、社外取締役の資格要件は、株式会社の取締役であって、当該株式会社またはその子会社の業務執行取締役もしくは執行役または支配人その他の使用人でなく、かつ、過去に当該株式会社またはその子会社の業務執行取締役もしくは執行役または支配人その他の使用人となったことがないものをいいます(会2xv)。


2 設置対象会社

 会社法上、社外取締役の設置が義務付けられているのは、以下の2つの場合です。

 [1]  委員会設置会社

 委員会設置会社では、取締役会の中に監査委員会、報酬委員会、指名委員会の3つの委員会を設置し、各委員会は取締役3人以上で組織し、委員会の委員の過半数は社外取締役でなければなりません(会2xii、400マル数字1マル数字2マル数字3)。

 [2]  特別取締役による取締役会決議の定めを置く場合

 特別取締役による取締役会決議とは、商法特例法の下での重要財産委員会に代わる制度です。これは、取締役の数が6人以上であり、かつ、取締役のうち1人以上が社外取締役である場合には、取締役会は、[1]重要な財 産の処分および譲受け、および[2]多額の借財(会362マル数字4iii)についての取締役会の決議については、あらかじめ選定した3人以上の取締役(特別取締役)のうち、議決に加わることができるものの過半数(取締役会で引上げ可)が出席し、その過半数(取締役会で引上げ可)をもって行うこと ができる旨を定めることができます(会373マル数字1)。この定めがある場合には、特別取締役以外の取締役は、特別取締役による議決に委ねられた事項を決定する取締役会に出席する必要はありません(会373マル数字2)。

 上記以外でも社外取締役が置かれている会社がありますが、任意によるものです。


3 機能

 社外取締役の機能は、取締役会の一員として重要な意思決定への参画と経営に対する監視ですが、後者の機能が重要です。設置が義務付けられている上記の場合は、まさに経営監視機能がその職務といえます。この監視義務は、個別具体的な監視義務ではなく、取締役会で決定し、代表取締役と業務担当取締役、執行役が構築する内部統制システムが適切に機能しているか否かについての客観的な立場からの監視義務です。


4 責任の軽減

 社外取締役は、会社の内情を知る機会が少なく、内部情報を提供してくれる社内人脈もないため、任務懈怠の責任を他の取締役と同等とするのは加重な負担を強いることにもなりかねません。

 そこで社外取締役が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは、定款で定めた額の範囲内であらかじめ会社が定めた額と最低責任限度額とのいずれか高い額を限度とする旨の契約を社外取締役と締結することができる旨を定款で定めることができます(会427マル数字1)。最低責任限度額とは、退職慰労金を含む職務執行の対価の2年分とストックオプション行使による利益の合計額で、以下のA、Bの合計額として計算されます(会425、会規113、114)。

 A  以下のイ、ロの合計額に、2を乗じた額

   社外取締役が在職中に報酬、賞与その他の職務執行の対価として会社から受け、または受けるべき財産上の利益(下記ロを除く)の額の事業年度(注)ごとの合計額(その事業年度の期間が1年でない場合は、1年当たりの額に換算した額)のうち最も高い額

    (注 )a  取締役の会社に対する責任免除の株主総会決議を行った場合は、その株主総会の決議の日を含む事業年度およびその前の事業年度

     取締役会決議などによって責任免除する定款の定めに基づいて責任を免除する旨の同意を行った場合は、その同意のあった日を含む事業年度 およびその前の事業年度

     責任限定契約を締結した場合は、責任の原因となる事実が生じた日(2以上の日がある場合は、最も遅い日)を含む事業年度およびその前の事業年度

   i をiiで除した額

 [1]社外取締役が会社から受けた退職慰労金、[2][1]の性質を有する財産上の利益の額の合計額

ii  社外取締役に就いていた年数と2年のいずれか多い数

 社外取締役が会社の新株予約権を有利な条件(会238マル数字3)で引き受けた場合における財産上の利益に相当する額であり、以下のイまたはロの額となる。

   社外取締役が就任後に新株予約権(職務執行の対価として会社から受けたものを除く)を行使した場合
 新株予約権の行使時における時価から新株予約権の行使に際して出資される財産の価額および払込金額(募集新株予約権1個と引換えに払い込む金銭の額)を控除した額

   社外取締役が就任後に新株予約権を譲渡した場合
 譲渡価額から払込金額を控除した額


5 登記

 社外取締役である旨については原則として登記事項にはなりませんが、特別取締役による議決の定めがある場合(会911マル数字3xxi)、委員会設置会社である場合(911マル数字3xxii)、社外取締役に関する責任限定契約の締結についての定款の定めがある場合(911マル数字3xxiv)にのみ、社外取締役の登記をする必要があります。


6 開示

 会社が公開会社である場合には、事業報告に社外取締役に関して、以下の事項を記載しなければなりません(会規121、124)。

[1]  氏名

[2]  地位および担当

[3]  他の法人等の代表者その他これに類する者であるときは、その重要な事実

[4]  当該事業年度中に辞任した会社役員または解任された会社役員(株主総会または種類株主総会の決議によって解任されたものを除く)があるときは、当該会社役員の氏名

[5]  社外役員が他の会社(外国会社を含む)の業務執行取締役、執行役、業務を執行する社員もしくは法人が業務を執行する社員である場合の職務を行うべき者(他の会社が外国会社である場合にあっては、これらに相当するもの)または使用人であるときは、その事実および当該株式会社と当該他の会社との関係(重要でないものを除く)

[6]  社外役員が他の株式会社の社外役員を兼任しているときは、その事実(重要でないものを除く)

[7]  社外役員が当該株式会社または当該株式会社の特定関係事業者(親会社ならびに当該親会社の子会社および関連会社(親会社が会社でない場合におけるその子会社および関連会社に相当するものを含む)ならびに主要な取引先である者(法人以外の団体を含む))の業務執行取締役、執行役、業務を執行する社員もしくは法人が業務を執行する社員である場合の職務を行うべき者または使用人の配偶者、3親等以内の親族その他これに準ずる者であることを当該会社が知っているときは、その事実

[8]  各社外役員の当該事業年度における主な活動状況(次に掲げる事項を含む)

イ 取締役会への出席の状況
ロ 取締役会における発言の状況
 当該社外役員の意見により会社の事業の方針または事業その他の事項に係る決定が変更されたときは、その内容(重要でないものを除く)
 当該事業年度中に当該会社において法令または定款に違反する事実その他不当な業務の執行が行われた事実(重要でないものを除く)があるときは、各社外役員が当該事実の発生の予防のために行った行為および当該事実の発生後の対応として行った行為の概要

[9]  社外役員と当該会社との間で責任限定契約を締結しているときは、当該契約の内容の概要(当該契約によって当該社外役員の職務の適正性が損なわれないようにするための措置を講じている場合にあっては、その内容を含む)

 [10]  当該事業年度に係る社外役員の報酬等の総額(社外役員の全部または一部につき当該社外役員ごとの報酬等の額を掲げることとする場合にあっては、当該社外役員ごとの報酬等の額およびその他の社外役員の報酬等の総額)

 [11]  社外役員が当該会社の親会社または当該親会社の子会社(当該親会社が会社でない場合におけるその子会社に相当するものを含む)から当該事業年度において役員としての報酬等その他の財産上の利益を受けているときは、当該財産上の利益の総額(社外役員であった期間に受けたものに限る)

 [12]  社外役員についての上記の事項の内容に対して当該社外役員の意見があるときは、その意見の内容

 [13]  当該事業年度に係る各会社役員の報酬等の額またはその算定方法に係る決定に関する方針を定めているときは、当該方針の決定の法およびその 方針の内容の概要(委員会設置会社以外の会社は省略可)

 [14]  上記の他、会社役員(当該事業年度の末日後に就任したものを含む)に関する重要な事項

 

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