目次 I−6


6 取締役の退任

 取締役は次の事由により退任する。
 [1] 任期の満了  [5] 欠格事由の発生
 [2] 辞任  [6] 解任
 [3] 死亡  [7] 破産手続開始の決定
 [4] 会社の清算    


1 任期の満了

 取締役は任期の満了により退任します。ただし、取締役の任期満了による退任により会社法または定款に定めた取締役の員数を欠くことになった場合、その退任した取締役は、新しく選任された取締役の就任までは取締役としての権利義務を有します(会346マル数字1)。この場合、裁判所は必要があると認めるときは、利害関係人の申立てにより、一時取締役の職務を行うべき者(仮取締役)を選任することができます(会346マル数字2)。


2 辞任

 取締役はいつでも辞任の意思表示によって取締役を辞任することができます。取締役と会社との関係は委任関係ですから、辞任について会社の同意や株主総会の決議は不要です(会330、民651マル数字1)。

 ただし、任期の満了の場合と同様、取締役の辞任による退任により会社法または定款に定めた取締役の員数を欠くことになった場合、その退任した取締役は、新しく選任された取締役の就任までは取締役としての権利義務を有します(会346マル数字1)。


3 死亡

 取締役は死亡により退任します(民653)。死亡した取締役の相続人がその地位を承継することはありません。


4 会社の清算

 会社が合併および破産以外によって解散した場合、取締役は退任し、その会社の清算人となります(会478マル数字1、475、477マル数字1マル数字2)。


5 欠格事由の発生

 取締役は取締役の欠格事由(参照)に該当することとなった場合には、その地位を喪失し、取締役を退任することになります。


6 解任

 会社はいつでも株主総会の決議により取締役を解任することができます(会339マル数字1)。

 この決議は、旧商法では特別決議となっていましたが、会社法では原則として普通決議とされました。定足数については、議決権の3分の1未満とすることはできません。決議要件は定款により加重することができます(会341)。

 累積投票制度により選任された取締役を解任する場合には、特別決議によらなければなりません(会309マル数字2vii、342マル数字6)。また、取締役の解任について拒否権が付与された拒否権付種類株式が発行されている場合(会108マル数字1viii)には、株主総会での決議に加え、当該種類株式に係る種類株主総会の決議が必要となります(会323)。さらに、取締役選任権付種類株式が発行されている場合(会108マル数字1ix)には、原則として、当該種類株式に係る種類株主総会で選任された取締役は、いつでも当該種類株主総会の決議によって解任することができます(会347マル数字1、339マル数字1)。

 なお、取締役の任期が満了する前に、正当な事由がなく解任された場合には、取締役は会社に対して解任によって生じた損害の賠償を請求することができます(会339マル数字2)。


7 破産手続開始の決定

 会社と取締役との関係は委任に関する規定に従う(会330)ため、取締役についての破産手続開始の決定によっても取締役の地位を失うことになります(民653)。

 

目次 次ページ