第2章−3 |
3.相続対策・事業承継対策の流れ |
相続対策や事業承継対策は、おおむね以下のような手順で進めて行くことがスタンダードな流れと思われます。
相続対策は病気の治療と同じで、医学には「予防医学」と「治療医学」がありますが、重要なのは「予防医学」です。相続対策は「予防医学」に当たり、相続税の申告は「治療医学」に該当します。病気は早期にその芽をみつけて、治療を始めれば、治癒させることができます。 そのために必要なのが、健康診断や人間ドックで、それらを受けることで病気をいち早く発見できます。財産のたな卸は、その健康診断や人間ドックの受診に該当します。財産のたな卸を実施することで、相続対策の必要性や問題点及びその対応策を見出すことができます。このことで、被相続人や相続人は相続対策の重要性を認識し、対策を実行に移す決断ができます。
財産のたな卸を通じて抽出された問題点を、具体的に解決するための対策の立案とその内容の検討を行います。その場合、将来の税法の改正や経済の大きな変化などによって相続対策の効果は変動し、かつ、相続対策には常にリスクとコストが生じることについて被相続人等の理解が重要となります。相続対策は一定の前提条件を基に立案するため、その条件が異なれば結果も変わります。そのため、対策の内容などについて被相続人等がしっかりと理解し、自らの意思決定によって実行した結果については、自己責任である旨の理解を得ておかなければなりません。 相続対策は、基本の対策のうち、実行可能なものから順次段階へ追って進めていくことで対策の効果を被相続人等に実感させる工夫も必要と考えられます。
当初に予定した効果が得られたのか対策の実行に伴い随時検証します。その場合、想定外の問題が発生したことで、対策の修正を行う必要が生じることもあります。また、その後も税制改正などに伴うメンテナンスが必要となります。 不幸にして、相続対策の効果が発生する前に相続が開始することがありますが、その場合は「治療医学」によって対処することになります。具体的には、相続税の申告に当たり、共同相続人間で遺産分割を工夫することによる相続税や相続人の所得税などの軽減を図るアドバイスが重要となります。 |