目次 Q1


 基礎編

 第I編 相続の基礎知識

 第1 相続の基本

Question
 相続の基本的な流れ
 相続の基本的な流れについて教えてください。

Answer 相続は、人が死亡したとき(又は失踪宣告によって死亡とみなされたとき)に開始します。相続開始後の基本的な流れは、まずは誰が相続人になるのかを確定させ((1)相続人の確定)、次に何が遺産になるのかを確定させ((2)遺産の確定)、それをどのような割合で分けるか計算して((3)相続分の計算)、最後に具体的な分け方を決める((4)分割方法の決定)という流れになります。

(1)相続人の確定
(2)遺産の確定
(3)相続分の計算
(4)分割方法の決定


(1)相続人の確定

 相続対策について検討するにしても、遺産分割について検討するにしても、まずは誰が相続人になるかを確定させることが必要になります。基本的な親族関係は当事者から聴き取りをして把握することになりますが、最終的には、必ず戸籍謄本等を確認して、相続人を確定させる必要があります。

 民法の原則は法定相続人であり、誰が相続人になるかは民法において明確に規定されています。相続人を確定させるに当たっては、その適用関係を誤らないように注意する必要があります。


(2)遺産の確定

 相続人を確定させた後は、遺産を確定させます。民法の原則では、被相続人に属した一切の権利義務が包括して相続人に承継されることになりますが(民896本文)、その範囲や内容を確定させた上で、それぞれの財産の評価をして、遺産の種類と評価額を確定させる必要があります。


(3)相続分の計算

 遺産を確定させた後は、それをどのような割合で分けるかという遺産分割の基準が必要になります。遺産は相続分に応じて各相続人が承継するのが基本ですので(民899)、遺産分割の基準は相続分ということになります。

 相続分についての民法の原則は法定相続分ですが、事案によっては特別受益や寄与分が主張される場合があり、その場合は法定相続分を修正した具体的相続分を計算する必要があります。


(4)分割方法の決定

 相続分の計算まで終われば、相続分を基準として具体的な遺産分割をすることになります。遺産分割は、基本的には、相続人全員で遺産分割協議をすることになりますが、任意に遺産分割協議が調わない場合は、調停・審判といった裁判手続が必要となります。

 なお、以上に対して、遺言がある場合には、その遺言の内容に従って遺産分割をすることになります。


(5)遺留分について

 以上が相続の基本的な流れですが、生前贈与や遺贈によって遺留分を侵害された相続人がある場合には、別途、遺留分減殺請求がなされることがあります。


 ワンポイント 税務

〜民法と相続税法の関係〜

 相続実務においては、相続税の問題を常に考える必要があり、その意味で、民法と相続税法は切っても切り離せない関係にあるといえます。この点、相続税法は、民法を基本とした上で、一定の場合にその例外規定を設けているという関係にあります。

 そこで、相続実務に当たっては、民法と相続税法を関連付けて理解するとともに、相続税法が民法とは異なる規定を設けている部分を意識することが重要です。本書では、随所で、民法と相続税法を関連付けて知識を整理するとともに、相続税法において民法と異なる規定が置かれている部分について解説することにしています。

 

目次 次ページ