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 3 連結納税の有利・不利

 単体納税と比較した場合の連結納税の有利・不利は取扱項目ごとに次のようにまとめられます。

連結納税の取扱項目 有 利 不 利
損益通算 連結法人の赤字と他の連結法人の黒字が相殺できる
親会社の繰越欠損金の活用 連結親法人の開始前繰越欠損金と連結子法人の所得が相殺できる
連結子法人の繰越欠損金の切捨て 特定連結子法人に該当しない連結子法人の連結納税への開始前または加入前の繰越欠損金が切り捨てられる(地方税は切捨てなし)。ただし、長期保有子法人や設立子法人など特定連結子法人の開始前または加入前の繰越欠損金は、その個別所得を限度として連結欠損金として繰越控除が可能となる
連結子法人の資産の時価評価 評価対象外法人に該当しない連結子法人において含み損課税が生じる 評価対象外法人に該当しない連結子法人において含み益課税が生じる
連結子法人株式の売却損益の修正 連結子法人株式の売却益が減少(売却損が増加)する 連結子法人株式の売却損が減少(売却益が増加)する
受取配当金の負債利子控除額 連結納税では、連結グループ全体の総資産により負債利子控除額を計算することおよび連結法人間の負債利子を含めないことから、単体納税と比較して関係法人株式や一般株式の負債利子控除額が減少する場合、益金不算入額が増加する 連結納税では、連結グループ全体の負債利子により負債利子控除額を計算することから、単体納税と比較して関係法人株式や一般株式の負債利子控除額が増加する場合、益金不算入額が減少する
グループ間債権の貸倒引当金の繰入制限 連結法人間の債権に対する貸倒引当金が計上できない
グループ間債権の貸倒実績率の計算からの除外 貸倒実績率の計算に連結法人間の債権の実績値が含まれないことにより、貸倒実績率が増加する 貸倒実績率の計算に連結法人間の債権の貸倒実績が含まれないことにより、貸倒実績率が減少する
貸倒引当金の法定繰入率の適用制限 連結親法人の資本金が1億円超5億円未満の場合、資本金1億円以下の連結子法人において、貸倒引当金の法定繰入率が適用できなくなる*
交際費の損金不算入 連結親法人の資本金が1億円超5億円未満の場合、資本金1億円以下の連結子法人の交際費が全額損金不算入となる*。また、連結親法人の資本金が1億円以下の場合でも、定額控除が連結グループで1回しか使えない
軽減税率の不適用 連結親法人の資本金が1億円超5億円未満の場合、資本金1億円以下の連結子法人において、法人税の軽減税率(18%)が適用できなくなる*。また、連結親法人の資本金が1億円以下の場合でも、軽減税率を適用できる所得限度額800万円が連結グループ全体で1回しか利用できない
特定同族会社の留保金課税 単体納税において留保金課税の対象となるグループ法人の個別所得金額(合計)と比較して損益通算により連結所得が減少する場合は、留保金課税の課税標準となる課税留保金額が減少する 連結親法人が資本金1億円超5億円未満であり、特定同族会社に該当する場合、資本金1億円以下の連結子法人も特定同族会社の留保金課税の対象となる*。また連結納税では、課税留保金額を合計して金額区分を行い、税率(3,000万円以下10%、3,000万円超1億円以下15%、1億円超20%)を乗じるため、各社ごとに低税率を利用できる(つまり、3,000万円、1億円の限度額を各社ごとに利用できる)単体納税と比較して、高税率が適用される課税留保金額が増加するため、留保税額も増加する
試験研究費の税額控除 連結納税では、連結グループの法人税額により控除限度となる法人税額基準額が計算されるため、法人税額基準額の増加により試験研究費の税額控除額が増加する 連結納税では、連結グループの法人税額により控除限度となる法人税額基準額が計算されるため、法人税額基準額の減少により試験研究費の税額控除額が減少する
外国税額控除 連結納税では、連結グループの法人税額、国外所得割合により外国税額控除限度額が計算されるため、控除限度額の増加により外国税額控除が増加する 連結納税では、連結グループの法人税額、国外所得割合により外国税額控除限度額が計算されるため、控除限度額の減少により外国税額控除が減少する
繰延税金資産の回収可能性の改善・悪化 連結グループの収益力に基づく、会社区分とスケジューリングにより繰延税金資産の回収可能性が改善する 連結グループの収益力に基づく、会社区分とスケジューリングにより繰延税金資産の回収可能性が悪化する

 上記図表は、連結親法人が資本金5億円以上の外国法人の100%子会社である場合を除く。この場合、連結納税の不利は生じない。
 なお、「資本金が5億円以上である法人との間に当該法人による完全支配関係がある連結親法人」は中小企業の特例措置を適用することができない。したがって、連結親法人が資本金5億円以上の外国法人の100%子会社である場合はもちろん、連結親法人が資本金5億円以上の内国法人および当該内国法人の100%子会社である外国法人に発行済株式等のすべてを所有されている場合も中小企業の特例措置を適用することはできない。しかし、本コンテンツでは、資本金が1億円以下の連結親法人のうち、中小企業の特例措置が適用できない場合として「連結親法人が資本金5億円以上の外国法人の100%子会社である場合」のみを想定している。

 

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