目次 II-8


8 キャッシュバランス型制度への移行処理


Question
 最近、キャッシュバランス型の退職給付制度を導入する企業が増加してきています。このキャッシュバランス型の退職給付制度の税務上の取扱いについて説明してください。



Answer

(1) キャッシュバランス型退職給付制度について

 ハイブリッド型退職給付制度は、確定拠出型退職年金制度と確定給付型退職給付制度のそれぞれの特徴を取り入れた混合型年金制度です。ハイブリッド型退職給付制度には、確定給付ベース、確定拠出ベース、併用型の3種類がありますが、キャッシュバランス型退職給付制度は、確定給付型の性質が濃い確定給付ベースのハイブリッド型退職給付制度です。日本では、ハイブリッド型退職給付制度のうち、唯一、キャッシュバランス型退職給付制度が税制適格制度として認められています。キャッシュバランス型退職給付制度は、確定給付企業年金法による規約型あるいは基金型の確定給付型企業年金に導入できます。また、厚生労働省の平成15年5月30日付政省令公布により規制緩和が実施され、従来の厚生年金基金制度のままでも導入が可能になりました。

 キャッシュバランス型退職給付制度は、仮想の個人別口座を設定し、企業が個々人の仮想口座に毎期クレジットを計算上で付与するものです。個人別給付額は、拠出クレジットと利息クレジットの合計額になります。利息クレジットの設定利率が経済環境に変動する指標の場合、給付額が変動します。なお、企業の掛金負担額は、目標の年金原資額、利息、クレジットの設定利率、拠出クレジットの設計、制度移行の年金移換額により決定されます。

 拠出クレジットは、基準給与の一定率又は一定額とします。拠出クレジットの乗率等には、全従業員一律のほかに、勤続年数別や年齢別勤続年数別による別々の乗率等の設定があります。

 利息クレジットの設定利率は、一定期間ごとに見直されます。退職給付債務の割引率と利息クレジットが近似で連動することにより、退職給付のコストが長期的に安定する長所があります。


(2) 会計上の取扱い

 会計上は、確定給付型の退職給付制度の一種として退職給付債務が計算されます。したがって、確定給付型の退職給付制度からの移行については、移行前後の制度を一体とみなした処理が可能です。


(3) 税務上の取扱い

 (1)に記載のとおり、厚生年金基金の他、確定給付企業年金法に定める確定給付企業年金として取り扱われます。(企業年金法令24(1)三)

 また、資産を移換する場合は、移換可能限度額以内の拠出額については、税務上非課税となり、拠出額は全額損金算入されます。(法令135(1)三)

 

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