目次 II-9


9 退職一時金制度から確定給付企業年金への移行


Question
 当社では退職一時金制度を採用しています。このたび、確定給付企業年金の新規導入を考えています。確定給付企業年金の税務及び退職一時金制度から確定給付企業年金への移行に関する税務について、説明してください。



Answer

(1) 確定給付企業年金の税務

 確定給付企業年金法(平成13年6月15日法律第50号、平成14年4月1日施行)の施行により、確定給付企業年金がスタートしました。税務の取扱いは、現行の税制適格退職年金制度あるいは厚生年金基金制度と同じです。

 すなわち、事業主拠出分は掛金拠出時に全額損金算入され、本人拠出分は生命保険料控除の対象になります。年金資産の運用時には、特別法人税が課税されますが、特別法人税は平成17年3月31日まで凍結されています。(措法68の4)また、退職給付の受給額は、その受給時に、受給形態によって雑所得、退職所得又は一時所得として課税されます。


(2) 退職一時金制度から確定給付企業年金への移行に係る会計処理

 退職一時金制度から確定給付企業年金への移行は、確定給付型の退職給付制度から他の確定給付型の退職給付制度への移行なので、移行前後の制度を一体のものとみなし、移行前の退職給付制度については、退職給付制度の終了には含めません。

 この場合、未認識過去勤務債務、未認識数理計算上の差異及び会計基準変更時差異の未処理額については、従前の費用処理方法及び費用処理年数を継続して適用します。

 ただし、移行に際して、退職給付債務が増額又は減額した場合は、過去勤務債務を認識して、企業の採用する過去勤務債務の処理方法により、処理します。

 これらの処理は、全部移行の場合も、一部移行の場合も同じです。


(3) 移行による税務への影響

 退職一時金制度においては、法人税法上の退職給与引当金制度が廃止されたため、退職金支給額がその支給事業年度に損金算入されます。確定給付企業年金においては、企業の拠出額がその拠出時に全額損金算入されます。

 事業年度により退職者数の変動が大きい場合、退職一時金制度では、事業年度ごとの退職金支出が変動するため、損金算入額が変動します。一方、確定給付企業年金制度では、掛金拠出額が平準化されるため、損金算入額が平準化されます。これにより、資金負担を平準化させる効果があります。

 法人税法上の退職給与引当金制度が廃止されたため、平成15年3月31日以後最初に終了する事業年度から、退職給与引当金の段階的取崩しが強制されています。この段階的取崩しを実施している事業年度において、退職一時金制度から確定給付企業年金制度へ移行したことにより、退職給与引当金の残高が期末自己都合による退職給与の要支給額を上回った場合においてもその超過額を取り崩す必要がないため、従来どおりの段階的な取崩しを継続することができます。(II−4参照)

 

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